1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

「SHERLOCK シャーロック」ブームに思うこと - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年1月23日 8時5分

 そこから顔を歪めて、こう言った。

「当局の規制が、産業を歪めている。ぼくの知り合いには海外映画の買い付けや発行の仕事をしたいと本気で思っている人がいる。だが、中国では公開上映には検閲が必要だ。検閲もいつ結果が出るのかわからない。つついてもダメなものはダメで先延ばしにされる。それが当局の仕事のやり方。担当者の機嫌を損ねる事にでもなれば嫌がらせをされるかもしれない。それを回避して認可をもらってスケジュール通りに上映するためには、積極的に付け届けをしたり、頼みごとを聞いてやったり、いろいろとご機嫌を取らなければならないんだ。それにはどれくらいのお金がかかる? どんなに手間暇がかかるだろう? その結果認可が下りなければ?......だったら、海賊版を作って売る。手っ取り早いし確実だ。自分が観せたい映画を観てもらう。海賊版の横行は、中国人にカネがないからじゃない、制度がいい加減すぎるからだ」

 彼自身、当時は規制を受けながら当局の裏をかきつつ映画を撮っていた。その彼の周囲にはたくさんの同好の士がいたはずだ。そんな仲間たちでいろんな情報交換をしていたのだろう。確かに、そんな映画人たちに紹介されたDVD店に行くと、店員がむちゃくちゃ作品に詳しくて、探している映画のタイトルを忘れてぼんやりとしたイメージ、あるいは出演者の名前を伝えるだけで、「これだろ」と海賊版が出てきたこともたびたびあった。

 つまり、人々に熱意もやる気もあっても必ずしも正規の商売ルートに結びつかないのは、当局の規制(にあぐらをかいた体制)があるからなのだ、とその時初めて中国の裏事情を知った。

 実際に動画サイトの発展を見てもそれがよく分かる。「流星花園」のあたりから少しずつ人々は動画サイトでビデオを見るようになった。海賊版に字幕ボランティアによる、時にはむちゃくちゃな字幕。そうして人々はだんだん、米ドラマ「フレンズ」「バンド・オブ・ブラザース」「アリー my Love」「ER緊急救命室」「Sex and the City」、さらには最近の「Dr.HOUSE」「ブレイキング・バッド」など動画サイトに釘付けになる。映画も同じく、また昨年話題を呼んだ日本ドラマの「半沢直樹」も、すべて動画サイト配信だ。

 もちろん「半沢直樹」も含め、現在に至るも海賊版、あるいはコピーが流れている。今回の「シャーロック」のように実際にきちんと使用料を払って配信権を取得するパターンも生まれているのは事実だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください