も〜いーくつね〜る〜と〜お正月〜 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年2月2日 12時11分
たぶん、それらを理由にあげる人たちは実家の家族や親戚とも折り合いが悪かったりするのかもしれない。実際には「寒いけど」「WiFiは便利じゃないけど」と言いつつ、それでも故郷で楽しいお正月を過ごして帰ってくる人たちはまだまだ多いのだから。
面白いことに、そんな都会暮らしの人たちが持ち帰る「都会生活」も故郷では「ウリ」になるらしい。あるサイトでは、「実家の両親/親戚のスマホに入れてあげると良いアプリ」なる特集もあった。都会で散々ネット生活を楽しんでいる彼らが持つ知識はやっとPCやスマホを手にした人たちにとって「情報の最先端」なのだ。さらにこの時期に故郷の親のお土産にスマホを買って、そこに日本で人気の「LINE」によく似たチャットサービスアプリ「微信 WeChat」や「QQ」などをインストールし、使い方を教える。さらにはインストールしたEコマースアプリの支払い登録ページに自分のクレジットカードや銀行口座をバンドルさせておくという「親孝行」な話も聞く。
そうだった、中国ではこれまでずっとこうやって、日頃は故郷を離れて暮らす都会暮らし人たちが「民族大移動」で「文明」を持ち込んで都会と田舎をつなげてきた。旧正月の「民族大移動」にはそんな「効用」もあったのだった。身近な親戚が帰ってきて、都会での自分の生活を皆に語る。それを聞きながら人々は、特に若者たちは見知らぬ、でもなんだかワクワクする街へのあこがれをふくらませる。「民工」と呼ばれる農村からの働き手はいつも旧正月後にどっと都市へ流れ込む。それは旧正月に里帰りした親戚の土産話に当てられたからだ。こうして少しずつ、都市と田舎の新陳代謝が進んでいく。
そんな正月に今年はもう一つ特筆すべき現象がある。1年でこの時期のみ上げることを許されている爆竹や花火が、今年は格段に減っていることだ。
北京ではかつて爆竹や花火が禁止されていた。それが2005年に旧正月の大みそかから正月15日目までだけ期間限定で解禁されて以来、年々豊かさを象徴するかのように「この時だけ」の花火と爆竹は派手になっていた。大みそかは早くからあちこちで「ぼーん、ぼーん」と「前祝い」が上がっていたし、日付が変わる頃は家のガラスが震え、テレビをつけていても聞こえないくらいの大音響だった。もちろん、街を歩くときは要注意だ。正月1日目も喜び冷めやらず、朝から晩まで絶えず「ぼーん、ぼーん」とどこかで鳴っていた。
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