も〜いーくつね〜る〜と〜お正月〜 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年2月2日 12時11分
だが、今年は明らかにそれが減っている。まず大みそかの花火も賑やかに上がっていたが、日付が変わって1時間ほどでおとなしくなった。元旦ですら昼間は爆竹の音を殆ど聞かない。夜になると思い出したように花火が上がっているのが見えるが、「ガラスが震える」には程遠い。こうして原稿を書きながら耳をすましても、ほとんど何も聞こえてこない。そしていつもなら通りをにぎわす車の音も聞こえてこない。静かな正月だ。
正月前には北京市が大気への影響を理由に花火や爆竹を上げるのを控えるようにという通知を出していた。上海市ではこの時期に特別に設置される花火・爆竹販売店の数を例年に比べて20%近く減らしたそうだし、北京でも同様の措置が取られているという。メディアには「この時にしか上げられないのに」「正月くらい、いいだろう」という声も紹介されていたが、結果から見ると、明らかに手控えムードに入っている。
PM2.5の深刻さが市民レベルでも話題に上がるようになってすでに2年以上が経つ。状況が改善したという印象はまったくなく、昨年は夏の間も灰色の空気が立ち込める日々が続いた。街はもうそんな日常に慣れっこになってしまったように、外国人ですらマスクをする人は激減している(が、マスクをしていても奇妙な視線を投げかけられることはもうなくなった)。
だが、人々は忘れているわけではなかったようだ。いつになっても晴れない灰色の空気は、何事もないように振舞っている北京の人たちにとってもやはり重く心にのしかかっていたらしい。だからこそ、市の管理者の呼びかけに市民は自発的に応えた。この、わずか2週間しか許されていない伝統を楽しむ権利を、多くの人たちがここで返上したのである。マスクをして深刻そうな表情を浮かべて通りを歩くことはなくても、それでも人々は心のなかでこの状況を憂いている。
あと数日で正月休みは明ける。その時またきっと政府は数字を上げて、これを自分の手柄のように自画自賛することだろう。だが、人々はこうして自分たちの憂慮を表明した。こうした人々の小さな、出来る限りの努力を政府はどこまで汲み取ってその期待に応えていくのだろう。
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