1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

東莞、東莞 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年2月13日 7時0分

 このような人々の根本的な生活に関わる、「もっと多くの、もっと重要なニュースがあるはず」という指摘は、アップルやスターバックス叩きの時にもあった。だが、それらは「消費者権益」、そして今回は明らかな「違法性」で、中央電視台は頬かむりをしている。さらに秦さんはこう続けている。

「そして彼らはサウナやホテルに潜入した。そちらのほうが気楽だし、肩も凝らない。さらには公費で消費者を装って大金持ちのふりをし、一列に並んだ若い女性たちを指差しながら品評し、そしてズボンを上げてから聖人君子ぶった顔で警察に通報する。警察に通報するのだって結局は匿名電話である。だが、一方の彼女たちは警察に身分証を調べられ、家に通報され、さらには大衆の目の前にさらされる危険に直面する。そして大衆にとっては、それはもうとっくに知っている事情でしかない。つまるところ、サウナに潜入してもなんのニュース価値はないのである」

 この報道が大批判を引き起こしたのは、この女性たちが置かれた境遇に番組では一切触れていないことだ。報道は彼女たちをただの「違法な売春婦」としてしか扱っておらず、女性たちがなぜそこに立っているのかについては一言も触れず、また彼女たちと言葉を交わしている様子も流れていない。彼女たちは番組が告発するための、ただの「道具」なのである。

 ジャーナリスト出身のコラムニストの鍾二毛氏は、「こうした報道は『なぜなのか』『どうすべきか』に立脚すべきであり、『何が』『いかに』を絶対に立ち位置にしてはいけないはず」と述べる。

「中央電視台の記者はもっと取材して、『なぜなのか』『どうすべきか』を探り、さらに国際的な水準から言えばさらに高い場所に立って、その立ち位置を『人』に置き、技師たち(女性たちのこと)、買春者、法執行者の話にすべきだった。人の困窮、制度の困窮、都市発展の困窮、それを描けばピュリッツァー賞並みのテーマなのに、中央電視台の報道は残念なことに、人の目を引きつけるという面では100点だったが、報道価値からすればマイナス、失格だ」

 実際に隠し撮りされた映像では一部の女性の顔にはモザイクが入っておらず、見る人が見れば誰だかわかるかもしれないような場面もあった。さらに、日頃東莞で働いていることを理由に婚約を破棄された女性もいるという話が微博で話題になっていた。この事件で大きく注目されるようになった東莞はもともと、香港や台湾からの資本で作られた工場が立ち並ぶことで栄えた街である。性風俗業界が生まれた背景にも、外からひっきりなしにビジネスにやって来る人たちの需要があったためで、さらには工業マネジメントで培った管理手段を応用した「東莞型サービス」というスタイルが産業を支えているそうだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください