人々はスマホに自分の運命を賭け始めた? - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年2月24日 7時43分
そんな矢継ぎ早の動きを見ていて、日本人ならこんな新興サービスに銀行カードの連携や資金の移入はまず警戒から始まるが、中国では人々がざざざっと動くことに驚く。だが、その気持ちもわからないではない。というのも、中国においてはこれらの分野では既存のサービスがあまりにもぞんざいで、時間を浪費させられ、顧客である自分が不快な思いにさせられることがあまりにも多い。自分の好みにフィットしたものよりも、企業の都合に振り回されることも多く、逆にテンセントやアリババが提供するスピード感やフットワークの軽さ、そして利便性が20代から40代の人たちに大歓迎されている。
加えてテンセントのチャットソフト「QQ」、そしてアリババの「淘宝」「アリペイ」は、今の消費世代がITの普及と自分の成長とともに慣れ親しんできたITブランドである。「そんなに簡単に銀行カードバンドルして大丈夫かよ、セキュリティーは?」と我々が思う以上に、長年付き合ってきた「仲間」のような親しさを感じているらしい。それが人々が垣根を超えてぽんぽんと彼らのサービスを試してみようとする信頼感につながっているらしい。
だが、その怒涛のような傾倒に当局は不安を感じないわけではないようだ。先日、北京市交通運輸局は「アプリに気を取られて安全に影響する。利用はタクシー1台につきアプリは1種類まで」という規制を出した。さらに、国有テレビ局中央電視台の論説員はアリババの理財サービス「余額宝」を「金融業界の寄生虫」と呼び、「社会の融資コストと経済的な安全を脅かすものであり、規制すべきだ」という論説を発表した。だが、どちらも予想されていたことで、ネットユーザーたちの嘲笑を買っている。
あるネットユーザーが嬉しげに、タクシーの運転手のこんな言葉を紹介していた。
「テンセントとアリババが身銭を切りながら競争すれば、ぼくらが得をする。市場競争バンザイだ」
「市場」を口にしつつ、何かあると規制に乗り出すこの国。人々は国の規制よりも、テンセントやアリババのサービスに賭けてあっさりと銀行カードを連携させ、資産を国営銀行からテンセントやアリババに移し替えた。それはある意味、スマホで自分の生活をコントロールするようになった世代の当局に対する強烈な風刺なんだろうか。
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