グレーゾーンvsグレーゾーン:それがこの国? - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年4月2日 6時24分
だが、メディアにマイクをつきつけられた中央銀行トップ及び政府の金融管理者たちは口をそろえて、「イノベーティブな動きは歓迎すべきだ。問題はあるかもしれないが、現代的なインターネット、そしてそれに支えられた金融がまた新たな動きを生み、新しい利潤モデルが生まれるはず。管理は必要だが、取り締まることはしない」と語り、銀行業界を愕然とさせた。さらに李克強・国務院総理もその施政報告で「インターネット金融の健康的な発展を促進していく」ことを明らかにしている。
これらの「お墨付き」に気を良くしたかのように、その直後にテンセントとアリババがそれぞれ中国銀行ランク11位の中信銀行と組んで、オンライン支払いサービスを使ったバーチャルクレジットカードを発行することを発表した。そのうちアリババが発行するクレジットカードは、中国のネット支払い額の約3分の1を占めるアリペイが持つ膨大な取引記録を参考に、そのユーザーからのオンライン申請を即時に認可するという触れ込みだった。それを聞いた時、これぞ中国最大のネット商取引のドンだ!とその規模の大きさにわたしも驚いた。
だが、一部のメディアからすぐに出た「アリペイが持つ個人データをどこまで銀行側と共有するのか」という質問に対して、アリペイ側は口を濁したという。しかし、このバーチャルクレジットカード発行発表の日に銀行業監督管理委員会が発表した今後推進予定の民営銀行試行プロジェクトのリストにもアリババとテンセントの名前が上がっており、今後アリババとテンセントは民営銀行運営に向けても歩を進めていくのは明らかとなった。
こうしてネット業界、特にネット商取引で大きくなった企業が、次は金融というこれまで国家体制に守られていた業界ブロックに国のお墨付きで堂々とツバをつけた。これからどうなっていくんだろう――と誰しもが完全にアリババとテンセント、そしてそれを利用するユーザーたちの思惑通りになっていくかのように、次なる展開にワクワクしていたところにガツンと手痛い反撃が来た。
中央銀行が、バーチャルクレジットカード発行発表から2日後(3月14日)に緊急通達を出して、同業務の展開に待ったをかけたのである。理由は「クレジットカード発行などに対して規定されている、管理当局への30日前申請が行われていなかったこと」だという。さらにその通達では、アリペイなどの中国版「おサイフケータイ」がタクシーや商店などでの支払いに使用している2次元コード(QRコードなど)の利用もストップするように命じていた。2次元コード支払いとは、ユーザーが自分の携帯アプリ(アリペイや微信支付)を開き、そこにあるコードを商店備え付けの専用機器(POS機)でスキャンさせて支払いをするシステムだが、その安全性が確認できない、という理由だった。
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