グレーゾーンvsグレーゾーン:それがこの国? - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年4月2日 6時24分
国有銀行側は、ユーザーが銀行に出向いて手続きを取れば、限度額以上の振込が可能だとするが、中国の銀行は一旦出向くと常に黒山の人だかりで、イヤというほど待たされる。実はこれが銀行口座から手軽に資金を動かせるアリペイや「微信支付」があっという間に普及した理由でもあった。
これら立て続けに行われた措置に、アリババ総帥のジャック・マー(馬雲)氏が激怒。「誰が銀行にこんな権限を与えたのだ? ユーザーが自分の資金を自由に支配するのを妨げるような権限を?」とSNSでつぶやき、大きな注目を浴びた。一方で、銀行関係者側は、これはアリババ側が銀行システムのグレーゾーンを利用していたせいだ、と指摘する。
というのは、これまで銀行からアリペイへの振込は、「簡易支払い」というサービスを通じて行われていた。巨大化するネット支払いサービスのアリペイの存在を中国の国有銀行も無視できずに提供したとされるが、ユーザーがアリペイのサイト上で自分の口座のある銀行を選び、そこに氏名、銀行ATMカード番号(=銀行口座番号)、身分証明書、携帯電話番号などの情報を打ち込んで、振込認可を待つ。つまり、ユーザーはこれら銀行口座と密接な関係を持つ情報を第三者サービスであるアリペイに自ら手渡し、アリペイが銀行と送金の手続きを取る形になっているのである。
日本の例を思い起こせば分かるはずだ。クレジットカードを利用する場合を除き、銀行口座から他サービスへ振込や支払いをする場合、日本では必ず本人が銀行の店頭に出向いてその手続きを取らなければならない。口座主が振込及び支払先の第三者に銀行関連情報を渡して代理申請することは出来ないことになっている。だが、アリペイは今まで膨大なユーザーからそれらの情報を預かり、銀行との認可を代行してきたわけだ。言われてみれば、これもかなりのグレーゾーンである。中国の銀行関係者は、それが許されたのは「簡易支払い」サービスとはもともと、「少額消費」を対象にしたものだったからだと説明する。
こうしてみると、確かにその説明の筋はそれなりに通っている。
だが、日頃からアリペイや「微信支付」を使ってきたユーザーたちは、これらを国有銀行やそれらが手を組んだ支払いサービス「銀聯」の横槍だと感じている。余額宝などのサービスの人気に慌て、貯金を移し始めた預金者に驚き、手軽なおサイフケータイサービスへの歓迎の声に焦りと感じているのだ、と受け止めている。
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