文革に翻弄された私の少年時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年9月3日 17時15分
幸いなことに、父は1年半後に「平反(名誉回復)」されて、家に帰ってきた。すると、近所の人たちはそれこそ手のひらを返したように喜び、爆竹を鳴らして父の帰還を迎えた。不払いになっていた給料も1年半分がドンとまとめて手渡され、親戚の中にはそのカネをせびりに来る人たちもいた。
私に言わせれば、中国の文革も、日本の現在の政局も、本質的には派閥争い、あるいは足の引っ張り合いにすぎない。もちろん、政治的な主義や主張の違いは、表面的にはある。だが、その根底にあるのは、政治家同士の好き嫌いや嫉妬心だ。立場が変われば、今まで冷淡だった人がもみ手しながら近づいてきたり、反対に、都合が悪くなると急に冷たくなったりするのは、中国も日本も同じだ。
政治家を志す人間がこんな話をして、夢も希望もないと思うかもしれない。日本でも中国でも、政治家は往々にして建前しか語らない(本音を語るのは、もっぱらメディアとのオフレコ懇談だ)。そして有権者は、政治家を「政策に詳しく有能で弁が立って清廉潔白な聖人君子」と思いたがる。当たり前だが、彼らもただの人間だ。「聖人君子」も一皮剝けば、煩悩や嫉妬のかたまりというわけだ。
もちろん、政治には夢も希望もある。ただ、それを実現するためには綺麗事だけではダメだ。政治の本質である人間同士のドロドロした部分を理解して、時にそういった感情とうまく付き合いながら、夢や理想の実現をめざす。
文化大革命を肌で体験したことで、私は子供ながらに政治の本質を理解することができた。それは、日本の政治でもおそらく変わらない。
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