NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月17日 16時12分
日本の料理人からしか学べないことというのはたくさんあるが、その1つが「発酵」だ。食品発酵について学ぶため、金沢の次に沖縄に行く。沖縄の人はなぜ長生きなのか。ストレスがないせいかもしれないが、それだけではないだろう。食事も重要に違いない。
例えば、女性は老いると骨粗しょう症など骨に異常をきたしがちだが、発酵食品である納豆を食べている人の骨は強い。大豆はカルシウムが豊富なだけでなく、発酵させることでビタミンKが生まれる。私も納豆が大好きで、妻は毎日食べている。沖縄では、麹(こうじ)など様々な種類のバクテリア(細菌)について学ぶつもりだ。沖縄料理の手法で、豆腐を麹漬けにして数日置くとチーズのような食感になる。日本の食材とテクニックを使って、自分のフランス料理を強化したい。
また、学ぶだけではなく著名な料理人たちと一緒にキッチンにも立つ予定だ。どの店かは決まっていないが、私が彼らに自分のアイデアを教え、彼らも私に教えてくれる。私の店で出している黒トリュフを使ったメニューの1つは、今や京都の料理人が自分の店でも出している。同じレシピだ!
――自分のレシピを盗まれた、とは思わないのですか。
ノー。誰も盗んでなどいない。レシピを1つ差し出したら、翌週には新しい料理を考案すればいい。自分の手元で囲い続けていたら、新しいアイデアが出てくる余地がなくなってしまう。作ったら差し出して、常に新しいアイデアを探せるよう脳を空っぽにしておかないといけない。盗むのではなく、共有しているだけだ。互いに助け合い、互いの料理を褒め合う。誰かの料理に自分らしさを少し加えて、進化させていく。
【参考記事】1日だけ開店のポップアップレストラン、全米に増殖中
――逆に、自分の料理に和食の要素を取り入れると「フランス料理」でなくなるとは考えませんか。
いいや。私は「クズ(葛)」など日本の食材を多く使っているが、「フュージョン料理」ではない。私はフュージョン料理を「コンフュージョン料理」(混乱している料理)と呼んでいる。
例えば、ブーレイのメニューの1つに黒トリュフと鰹ダシ(出汁)をマリアージュさせた茶碗蒸しがある。茶碗蒸しはフランス料理では「フラン」といって、もともとはフランス人が日本人に教えたものだ。フランス人は、伝説的なシェフであるオーギュスト・エスコフィエ(1846~1935年)の時代からフランを作っていて、その少し硬めのフランを日本人が軽めにアレンジした。私が作る黒トリュフのフランは新しいわけではなく、単に(従来のフランと)食感が違うだけだ。
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