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いとうせいこう、『国境なき医師団』を見に行く5 (スラムの真ん中で)

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月22日 18時0分

 確かに野外のトイレにも、とても味のある訴求力の高い絵があったのを俺は思い出した。

 それを写真に撮りに行き、帰ってくると出かける時間になっていた。我々はダーンや紘子さんと別れ、宿舎に帰って昼食をとることになった。どうやらデルフィネさんも別な四駆に乗って自分の宿舎に戻るのがわかった。

 つまり彼女はわざわざ休みの日に、俺の取材のため出てきてくれていたのだ。

(クレオール語がわからないが、たぶん輸血の呼びかけ)

パーティに招待される

 夕方から、私たちの宿舎にいらっしゃいませんか?

 マルティッサンでの別れ際に紘子さんがそう言った。

 街の中のチカイヌという地域にある宿舎で、週末の屋上パーティがあるというのだった。

 いかにも気楽なように見えるが、催すのも派遣スタッフ、出席するのも派遣スタッフ。つまりそれが彼らのストレスマネージメントのひとつなのだ、とわかった。

 一体どんな宴を、彼らは開くのか。

 興味を持って出かけることにして本当によかった、と今つくづく思う。

 俺はそこで各国からの MSFスタッフに一気に会い、話をし、何が彼らを突き動かしているのかを知ることになるのだから。

(男子トイレ)

(女子トイレ。洗濯するべからず)

続く


いとうせいこう(作家・クリエーター)
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。最新刊に長編『我々の恋愛』。テレビでは「ビットワールド」(Eテレ)「オトナの!」(TBS)などにレギュラー出演中。「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務め、浅草、上野を拠点に今年で9回目を迎える。オフィシャル・サイト「55NOTE」

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

いとうせいこう


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