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資本主義の成熟がもたらす「物欲なき世界」

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月21日 17時50分

 消費の対象がモノからコトへ、消費欲からコミュニケーション欲あるいは体験欲へと変化しつつある。言い換えれば、モノに代わってライフスタイルを消費する時代がやってきたということです。

物欲レスな社会は穏やかで日本人に馴染む

 長期的に見て日本も同じ変化をたどっていくでしょう。東京の外食産業も以前より活性化していると思いますが、それはコミュニケーションの場となり得るような店に限っての話です。1人で入っても淋しくない飲食店が増えています。都市部で増加するバルもそういう造りですよね。

「外食=コミュニケーションコスト」という時代の変化をつかんでいる店は成り立つでしょうけれども、単に料理や飲み物を出すだけという古臭い発想のお店は立ち行かなくなると思います。

 また、お金以外の評価の尺度が増える社会になるということでいえば、聖職者や教員のような人間性や志がより深く問われる職業の人は社会的地位が上がる、あるいは志願者が増えるのではないかと思います。収入はそれほど多くなくてもやりがいが感じられるし、地域のコミュニティでの評価が高ければ慕ってくれる人や世話を焼いてくれる人が出てきて、現状よりも幸福度は上がるでしょう。

 ソーシャルメディアを通じて中身が丸裸になる社会では、コミュニティ内での信用も可視化されます。そこでの信用が高い、もしくは友達が多い人にはすごく生きやすい社会になるはず。そしてそれは日本人に馴染む生き方ではないでしょうか。

 ガツガツした物欲がなく、人々の振る舞いや言動が謙虚になり、調和と共有を重んじる穏やかな世界。それは大量消費社会より前に古くから日本にあった、どこか懐かしく親しみのある世界ではないかと思います。

WEB限定コンテンツ
(2016.1.7 中央区のグーテンベルクオーケストラ オフィスにて取材)

text: Yoshie Kaneko
photo: Kei Katagiri

※インタビュー後編:歴史感を伴った根拠なき自信を持て

株式会社グーテンベルクオーケストラは菅付氏が率いるクリエイティヴ・カンパニー。さまざまな分野で編集、ディレクション、また企業のコンサルティングなどを手掛けている。
http://gutenbergorchestra.com


* 総務省の家計調査報告(2015年平均)では、二人以上の世帯の消費支出で「被服及び履物」は前年比で実質7.2%の減少となっている。

** 上記と同じく総務省の家計調査報告では、「家具・家事用品」の支出は実質3.1%の減少となっている。

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