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【原爆投下】トルーマンの孫が語る謝罪と責任の意味(後編)

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月6日 6時7分

 しかし、私はこうしたやり方が有益だとは思わない。私たちは当時を生きた当事者ではないからだ。戦争を経験していない世代のアメリカ人と日本人は、再び険悪な関係になりたいわけではない。だから「謝罪しに来たのか」と聞かれたら私は、あの戦争のすべての痛みを注意深く、公平に見ようではないかと答えるだろう。

(相手の行動の)理由を知ろうとすることも役に立つ。私は(真珠湾攻撃の際に日本の首相だった)東條英機のひ孫である東條英利とメールのやりとりをしている。私たちは昨年、オーストラリアのテレビ番組にそれぞれ遠隔地から出演したが、中立の立場を探そうとしている点で互いに共感できた。「そっちが先に始めたんだろう」と言い合うより、(過去の敵と味方が)一緒になって、当時何が起き、なぜあれほど険悪な関係に陥ったのかと考えるほうが有益だ。非難や怒りを差し挟まずに歴史の経緯を振り返る作業だ。

――今から言うことは、何かを非難することが目的ではありません。単なる質問だと思って聞いてください。あなたは今まで、日本人に対して罪の意識を持ったことはありますか。

 ノー。なぜなら、私はあの時代を生きた世代ではなく、戦争に直接関わっていないからだ。私が感じるのは「責任」という意識だ。物事を良くするために尽力する責任だ。

――過去に対する責任ではなく、未来に対する責任だと。

 過去の行為に対する責任ではなく、過去に背を向けずに人の役に立つという意味での責任だ。当時の人間でないから関係ない、というのではない。

 被爆者たちが素晴らしいのは、アメリカ人がこの問題に積極的に関わりやすいよう配慮してくれる点だ。彼らは怒りや非難の応酬を抜きにして接してくれる。とても礼儀正しく「あなたは知る必要がある」と言ってくる。「どんな体験だったか、知らなければならない。私が教えてあげよう」と。

【参考記事】パックンが広島で考えたこと



アメリカでは原爆が戦争を終わらせたとの主張が根強い Universal History Archive-UIG/GETTY IMAGES

――「知る必要がある」と言われて、非難されているように感じたことは?

 ない。一度もない。

――あなたはトルーマン元大統領自身ではありませんが、日本人は「トルーマンの孫」としてあなたに接するでしょう。「自分はあのトルーマンではない!」と叫びたくなったことは?

 ないよ(笑)。私は偶然、大統領の家系に生まれた。重荷になることもあるかもしれないが、それをできる限り建設的に使うべきだ。家族の名声を責任を持って生かしていくのが責務だ。

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