海保の精神は「正義仁愛」――タジタジの中国政府
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月22日 15時40分
――中国は「嫌疑」をかけることしか、できないのか。
――自国の民を助けるために駆け付けることはできないくせに、他国の船を「嫌疑」の名の下に拿捕するのだけは早いんだから。
●今度は「反ギリシャ運動」でもする?ギリシャ製品不買運動とか? そういうことに注意をそらさせても無駄だよ。
●日本人は中国に対して、なんて良くしてくれるんだろう。これを「人道精神」って言うんだろうね。国籍とは無関係なんだよ。
●日本の巡視船が助けるなんて!得難いことだよ!これはどういう精神から来ているんだろう?
8月15日付け本コラム「中国衝撃、尖閣漁船衝突」にも書いたように、中国政府はネットの力に押されて8月11日の夜、ついに日本の行動を称賛する声明を発表している。
そして今度は、その「不名誉」を埋め合わせネットユーザーの批判をかわすために、ギリシャ貨物船を「中国の力」の下で監視下に置き取り調べをしていることを公表したというのに、名誉を挽回したどころか、新たな政府批判を招いてしまった。
精神性の高さ
筆者が驚いたのは、日本の海保を取材したときに初めて知った「正義仁愛」に代表される「海保の精神」という言葉と、中国のネット空間で数多く見られる「人道精神」や「これはどういう精神から来ているんだろう?」といったネットのコメントなど、「精神」という言葉がそこにあるという一致だった。
「力」ではなく「精神」が、もし最後に重要な役割を果たすのだとすれば、それは何とも心強いことだ。
この「精神性」において、このたびの件は日本の快挙であった。しかも、海保側は高い志でやるべきことをやっただけで、次の勤務に専念し尾を引いてない。
しかし中国では、その「精神性の欠如」ゆえに、いまだに尾を引き、ネットユーザーから厳しい指摘を受けていることは興味深い。
8月5日から11日にかけて急増した中国公船と漁船の尖閣沖侵入は、8月6日と9日の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を目指して、日本に「犠牲者ぶるな」というシグナルを発するためだった。オバマ大統領の広島訪問により「日本に対する歴史カード」の効力が弱まることを懸念した威嚇だったと解釈できる。
9月4日から中国の杭州で開かれるG20で中国包囲網を作らせないようにするために慰霊のための行事を利用するなどという、その「精神性の低さ」は至るところで露呈し、中国の心あるネットユーザーにも見透かされている。
日中韓外相会談を嫌う中国
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