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【南スーダン】自衛隊はPKOの任務激化に対応を――伊勢崎賢治・東京外国語大学教授に聞く

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月8日 16時3分

 もちろん、何かが起こったら現場の判断で助けることがあるでしょうが、大義名分として「日本の自衛隊だから日本人を助けなければ」という議論は、国連では全く意味が無いというか不謹慎でさえあります。PKOに派遣された自衛隊は、国連PKO本部の指揮下にあるということを理解すべきです。「東京に指揮権がある」という今までの日本政府の答弁はミスリードです。

――国連の平和維持活動が変化した例は。

伊勢崎氏 介入旅団(FIB)という概念があり、コンゴ民主共和国の国連PKOに13年、「前例にしない」という条件で、安保理決議されました。あらかじめ悪さをすると分かっている武装組織を「先制攻撃」をもできるということで物議を醸しました。いくら「住民保護」が大切とはいえ、そこまでやっていいのかと。

 しかし、コンゴではある巨大な凶悪武装集団の殲滅に「成功」してしまったので「前例にしない」で済むかと危惧されていたのですが、現在、南スーダンでもこれを認めるか否かという議論がされています。人権・人道主義のために国連PKOがどこまで交戦できるかというジレンマが、今、自衛隊がいる現場を支配していることを日本人は思い知るべきです。



軍紀の不在が問題となる可能性

――宿営地に保護を求めてくる住民を守る活動を自衛隊もすることになりますか。

伊勢崎氏 宿営地全体や市街をパトロールするような任務を自衛隊にさせることは、国連PKO本部としてさせるわけがありません。まず、自衛隊は施設部隊ですから。小規模の警護小隊が付随していますが、いわゆる歩兵部隊としての任務は与えられません。それに国連官僚としての司令部幹部は、自衛隊は「軍隊」でないことは分かっていますから、事故を起こしたら軍事的過失、つまり戦時国際法・国際人道法違反に日本は国家として対処できないことを理解しています。「安全なところでおとなしくしていろ」というのが了解事項です。

 歩兵部隊や機甲部隊のようなPKOとしてクリティカルな任務へは、周辺国や発展途上国――中国は例外ですが――からの派兵がPKOミッション設計の慣習的な前提となっている現在では、先進国の中でも奇特な日本の自衛隊は、はっきり言って「お客さま」です。日本政府は、今回の安保法制でも、歩兵部隊を出すというようなことは想定していないのですから、「通常任務」の観点からは、自衛隊のリスクをあまり心配する必要はありません。

 しかし、今回の首都ジュバでの戦闘のように、不慮の事態になったら別の話です。戦火に右往左往した住民が保護を求めてPKOの基地に大量に押し寄せ、それを武装組織が追ってくるような場面ですね。「住民保護」が筆頭任務ですから、たとえ自衛隊に銃口が向けられていなくても、住民が危機にひんしていたら「交戦」しなければなりません。それが政府軍、現地警察であってでもです。この場合は、国連一加盟国政府と国連PKOの「交戦」となります。

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