【南スーダン】自衛隊はPKOの任務激化に対応を――伊勢崎賢治・東京外国語大学教授に聞く
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月8日 16時3分
実は、私自身まだISの生まれる直前、アサド対反アサドというふうに紛争構造が単純だった時、少し関わりました。英国のシンクタンクの一員として、自由シリア軍の代表と、もし合意がなされるとしたらその内容はどんなものになるか、そして連立政権の誕生へのロードマップはどういうシナリオになるかのブレーンストーミングです。
アサド派の政治的発言権を保証しながら、アサド大統領自身はロシアに亡命させるとか、連立政権下で既存のシリア国軍と自由シリア軍の関係をどうするか、軍縮か統合かとか、そうしたシナリオをつくるのです。それは実現しませんでしたが、再びそうしたことを協議する時期が来るのかもしれません。その時、日本の役割はあるでしょう。
――日本が関わることのできる役割は何でしょうか。
伊勢崎氏 地上戦がこう着状態になり、停戦に向かう時に中立な軍事監視団を入れるという話に必ずなります。実は、アナン前国連事務総長がシリア和平特使だった時、国連とアラブ連合の共同で停戦軍事監視団の発足の動きになり、当時の民主党野田政権に自衛隊の派遣の要請がありましたが、結局やりませんでした。
その軍事監視団自体は実際にはあまり人が集まらず、攻撃されて撤退してしまい現在の混乱に至ります。軍事監視団は、非武装が原則、指揮官レベルの現役軍人で組織されるのが基本です。自衛隊の階級としては2佐、3佐レベルが行う仕事で、過去の国連軍事監視団でも実績があります。これを日本のお家芸にすればいいのです。
PKO5原則の見直しが必須
――日本政府に対して提言はありますか。
伊勢崎氏 日本政府だけでなく、野党そしてリベラルもしくは護憲派を含めた世論全体に言わなければなりません。南スーダンの自衛隊が現在、大変に緊迫する現場に駐留し続けるのは、安保法制を実行するためではありません。冒頭に言ったように、撤退できないのです。停戦合意が破れたら撤退し、虐殺を見過ごした時と時代が違うのです。
問題は安倍政権の安保法制ではありません。PKOの変化を見誤り、停戦合意が破れたら撤退という完全に時代遅れの日本のPKO参加5原則を根拠にしている日本の政局が問題なのです。だから、日本政府だけが国際社会の総意に反して停戦が守られている、と言い続けるのです。自衛隊は、PKO参加5原則の虚構を守るためだけに駐留しているのです。そして、この劣化した政局で南スーダンに自衛隊を送ったのは民主党政権なのです。
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