【南スーダン】自衛隊はPKOの任務激化に対応を――伊勢崎賢治・東京外国語大学教授に聞く
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月8日 16時3分
ぜひ、安倍政権支持・反対、安保法制賛成・反対を争点にするのではなく、この状況を打開するべく知恵を絞りましょう。
――他に関与の方策はありますか。
伊勢崎氏 国連文民警察という手があります。駆け付け警護、つまり国連スタッフのボディーガードは一義的には国連文民警察の仕事になっています。今ではインド、パキスタン両国と肩を並べる「PKO大国」の中国も、部隊派遣が主流になる前に、文民警察の派遣で場数を踏んできました。PKO部隊の統制根拠が戦時国際法・国際人道法であるのに対して、国連文民警察は受け入れ国の警察法を根拠にします。つまり、敵を「犯罪者」として対処するのです。
日本の警察をこれに派遣することは、憲法的に何の問題も無いはずです。でも、93年のカンボジアPKOでの高田晴行警視の殉職を機に、警察はトラウマに陥り、PKOに部隊は派遣しない米国でさえやっている国連文民警察への派遣に、組織として消極的です。
つまり、出したくない警察、そして、自衛隊を出して改憲への実績としたい歴代の自民党政権(旧民主党を含む)の意向が合致して、交戦権が支配する戦場に交戦権を持たない自衛隊を出し続けてきたのです。この欺瞞(ぎまん)の構造は、南スーダンの危機を受けて一新されなければなりません。
〔伊勢崎賢治氏略歴〕
伊勢崎賢治(いせざき・けんじ) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授昭和32年東京生まれ。内戦初期のシエラレオエネを皮切りにアフリカ3カ国で10年間、開発援助に従事し、その後、東ティモールで国連PKO暫定行政府の県知事を務め、再びシエラレオネへ。同じく国連PKOの幹部として武装解除を担当し内戦の終結に貢献する。その後、アフガニスタンにおける武装解除を担当する日本政府特別代表を務める。 著書に、「新国防論 9条もアメリカも日本を守れない」(毎日新聞出版)、「本当の戦争の話をしよう:世界の『対立』を仕切る」(朝日出版社)、「日本人は人を殺しに行くのか:戦場からの集団的自衛権入門」(朝日新書)、「武装解除」(講談社現代新書)など。
※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。
市川文隆(時事通信社解説委員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載
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