「打倒トヨタ」を掲げ、地域が共に闘う空気を意図的につくる
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月21日 15時48分
これが功を奏してスポンサーが増えました。また、いただいたお金もあえてディスクローズして、1億5,000万円までの差額も刻々と明示したんです。「あと○○万円でトヨタに勝てる可能性があるということか。じゃあ来シーズンはもうちょっと応援しよう」と、そう思ってもらえるような誘導作戦です(笑)。
前編で再建の第一歩としてスポンサー獲得にスポットを当てたと話しましたが、「打倒トヨタ」のスローガンはそのアプローチの本丸でした。1兆円の利益を出している日本最大の企業、そこが擁している日本一のチームに、地元のローカルな球団と力を合わせて勝ってみせる、その夢を一緒に見る。そういう状況を作るための格好の手段が移籍であり、みなさんと共闘しやすいストーリーを作ったわけです。
こうして資金調達が加速し、組織の成長が始まっていきました。ローカルチームの我々がベンチャースピリットをもってできること、地域のみなさんとともに成長することができるはずという勝手な確信はあったものの、ある面から見れば確かに自殺行為にもなり得たわけで、これは大ばくちでしたね。
bjリーグとNBLを取り持つ橋渡し役として
リーグを変えるかどうか迷っていたとき、経済的なメリットや戦略的な仮想敵国作りの他にもう1つ、日本のプロバスケットボール界全体への影響も考えました。
一番大事なのは日本のプロバスケットというスポーツのマーケットが成立すること。千葉ジェッツだけが頑張っても頭打ちになりますから、バスケットの産業自体が発展しないといけません。そのためにはリーグが統一することが大事だと私は信じていました。
移籍当時、bjリーグとNBLはあまりいい関係が築けていなかったんです。そこで我々がbjリーグからNBLへ移れば、薩長連合じゃないですけど両者を取り持つ橋渡し役になれるのではないかと、そういうことも念頭にありましたね。また、いずれリーグが統一されるとしたら日本バスケットボール協会のルールが採用されるでしょう。となると、NBLに移籍していれば統一したときに先行者利益も見込めます。こうした大局的な見地からも移籍を決めたという経緯があります。
結局その後、Jリーグの立役者である川淵三郎さんが公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグを創設し、Bリーグが発足、bjリーグとNBLは合流することになったのですが、弱小球団でスポンサーもつかなかった我々がNBLで奮闘している姿を見て、「うちもやれるんじゃないか」と思ってくれたbj所属の球団もあると思うんです。ですからリーグ統一の裏方としては、我々の移籍はささやかながら機能したと思いますし、意義があったと思います。
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