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「ドナルド・トランプの世界」を読み解く

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月17日 15時50分

 実際、あれだけロシアのウラジーミル・プーチン大統領を褒めちぎっておきながら、選挙終盤に「彼を支持しているとは一度も言っていない」と前言を翻している。また、選挙期間中は声高に撤廃を叫ぶなど猛批判していたオバマケア(医療保険制度改革)についても、修正にとどまることを示唆するなどトーンダウン。制度の「根幹部分は大好きだ」と言い放っている。

 外交面についても、勝利演説では一転して融和的な態度をのぞかせた。「アメリカを第一にしつつも、どの国もフェアに扱い、敵意ではなく共通点を見いだし、紛争ではなくパートナーシップを追求する」

 経済面では楽観論も一部に出ている。1つには、公約として訴えた法人税減税が市場に好感されている。規制を1つ導入する場合には、既存の規制を2つ撤廃する「ルール」も打ち出している。また、勝利演説の際、大規模なインフラ投資を行うと語った。

 確かに、アメリカのインフラは世界第1の経済大国にふさわしい代物とはお世辞にも言えない。世界的に行き過ぎた緊縮財政と金融政策への過度な依存が指摘されているなか、新たな財政政策として大規模インフラ整備が行われれば、アメリカ経済にとって大きな刺激となり得る。

 言うまでもなく、今後はトランプもワシントンと国際情勢の「現実」と向き合うことを迫られる。

 まずは議会。大統領選と同時に行われた議会選挙で、上下両院とも共和党が過半数を確保した。しかし同じ共和党とはいえ、財政規律を重んじる傾向が強いため、大風呂敷的な歳出計画が通るかは未知数だ。

 国防予算の上限を撤廃し、米軍を大幅に増強する計画についても同じだ。予算確保のために国防総省の予算を一から見直し、「監査」を行うとしている。確かに、アメリカの国防費には巨額の使途不明金もあるとされる。しかし、複雑に入り組んだワシントンの政府機関や権力構造の中で、「監査」が一筋縄でいくとは考えにくい。

職権乱用の可能性はあるか

 一方で、ただでさえ大統領権限はこれまでになく拡大していることも指摘されている。議会と良好な関係を築かなかったオバマは大統領令を乱発し、職権乱用との批判を受けた。

 既に、トランプは大統領権限を乱用する可能性を選挙中に示唆した。クリントンが私用のメールアドレスを公務に使ったことについて特別検察官を任命し、彼女を「監獄にぶち込む」とも息巻いた。

 半面、外交面における大統領権限は明確でない部分もある。大統領は上院の承認を得た上で条約を結ぶ権限があるが、破棄する権限があるかは明確に定められていない。

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