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「ドナルド・トランプの世界」を読み解く

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月17日 15時50分

トランプとどう向き合うか

 アメリカと世界を困惑させ続けるトランプと「トランプ主義」を読み解く上で、1つのヒントがある。ワシントン・ポスト紙のメディアコラムニスト、マーガレット・サリバンによると、IT起業家・投資家でトランプ支持者のピーター・ティールは最近、講演でこう語ったという。

「メディアはトランプの発言を言葉どおり受け取るが、彼の存在を真剣に受け止めようとしない」

 サリバンは書く。メディアとは逆に、多くの有権者はトランプという存在を真剣に受け止め、彼が発する言葉はそのまま受け取らない、と。例えば不法移民対策。「メキシコとの国境沿いに壁を造る」とトランプが言うと、支持者はそれを額面どおりに受け取らず、「より理性的で、理にかなった移民政策が生まれる」と感じるのだという。

 これを「無知」「低学歴」と切り捨てるのは簡単だ。しかし、トランプの言葉が彼らの心に響いたことは厳然たる事実だ。



 これから、トランプはワシントン流の政治を一新する。そして、予測不能で不確実な時代が訪れる。そうしたなか、私たちは「トランプ大統領」という現実とどう向き合うべきか。

 常人の理解を超えた指導者が誕生すると専門家やメディアも臆測を好き放題に語りがちだ。その臆測がさらなる臆測を呼び、いたずらに混乱をあおり、実態以上の危機を生み出し、傷口を不必要に広げる恐れがある(日本も鳩山由紀夫元首相という形で経験済みだ)。

 いくら世界の超大国に未知数の男が君臨するとはいえ、浮足立ったり、顔色をうかがったりするような姿勢を見せるのは禁物だ。とっぴな政策を掲げてきたトランプだが、各国政府は泰然と構えることが求められる。

 この点、カナダのジャスティン・トゥルドー首相は対応を誤った。大統領選の翌々日、トゥルドーはトランプが掲げるNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉・破棄について「喜んで協議したい」と語った。トランプが就任する前にもかかわらず、尻尾を振って彼に擦り寄るかのような言動はトランプをつけ上がらせるだけだ。協議に応じる意向があるとしても、この局面ではメキシコ政府のように、手の内を明かさず曖昧に対応する方が賢明だ。

次期大統領を待つ厳しい現実

 今のところ、トランプの選挙中の大言壮語や好戦的な態度は影を潜めている。勝利演説は打って変わって穏健で、国民の団結を呼び掛けるものだった。

 トランプの本質は「ビジネスマン」というより、「セールスマン」に近い。彼にとって、選挙中に語ってきたことは「公約」というよりも、あくまでもセールストークなのかもしれない。

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