トルコという難民の「ダム」は決壊するのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月30日 17時30分
・まずはトルコからEUへのオファー。トルコからギリシャ(EU及び域内移動の自由を認めるシェンゲン協定加盟国)に入って滞留している難民のトルコへの送還を認め、加えてトルコ・ギリシャ間の国境警備の強化を行う
・次にEUからトルコへのオファー。トルコ国内の難民支援にかかる費用を支援する、トルコからEUにシリア難民を一定数再定住させる、トルコ国民がEU渡航する際のビザを免除する、トルコのEU加盟交渉を加速させる
・この合意の結果、トルコ・ギリシャ間の国境警備が強化され、バルカンルート経由でのEUへの難民流入はかなり抑制された。トルコ側からも、EUに対して合意内容の履行が要求された。特にビザなし渡航やEU加盟交渉の加速についてその履行を要求された
・2016年7月15日、トルコ国内でクーデタが発生する。クーデタそのものはすぐに押さえられたが、非常事態宣言下のトルコでは、エルドアン政権による様々な人権侵害が横行する。反体制派の人々が数多く逮捕され、何万人もの公務員が解雇され、数百のNGOやメディアが解散させられ、大学の学長指名にまで政治介入が行なわれた
・EUはクーデタ後のトルコにおけるこうした状況を強く非難した。EU加盟交渉との関係においては、人権や法の支配が尊重されていない状況は論外であり、EU加盟のために2002年に廃止された死刑制度の復活についてエルドアンが好意的に語り始めるという状況にいたっては、EU側からのトルコに対する態度を硬化させるに十分であったように思われる
・こうした経緯を経て、去る11月24日の木曜日、EU議会はトルコのEU加盟交渉凍結を求める採択を決議した。この決議はその性格上拘束力をもつものではなかったが、エルドアン大統領はこれに対して強く反発し、EU(具体的にはギリシャ)との国境警備を緩和し、中東からの難民流入を放置する姿勢に転換する可能性を示唆した
・これは難民受入が国内の正統性危機に直結しかねないEU諸国(特にドイツ)にとって、バーゲニング手段として強く機能してしまう可能性がある
・時系列を少しだけ遡ると、その数日前、11月20日の日曜日にエルドアンは中国とロシアを中心とする「上海協力機構」への加盟を示唆した。これは、EU加盟がトルコにとっての絶対的な希望であるわけではないと示すことを意図したものであり、11月24日の欧州議会での決議を見越して、EU-トルコ間合意履行についての賭け金を高めるための発言だったと考えられる
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