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オルト・ライト(オルタナ右翼)とは何者か

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月12日 16時0分

 だが極右主義者の訴えは大半の人々の心には響かなかった。それどころか9.11テロ以降は革命を扇動した極右の指導者の多くが、新たに制定された反テロ法(米国愛国者法)の下で起訴され刑務所に送られた。2000年代半ばまでに、極右の勢いはどん底まで落ちたかに見えた。

 その穴を埋めたのが、リチャード・スペンサーをはじめ、極右のなかでも知識層が結集した新しい組織だった。

【参考記事】alt-right(オルタナ右翼)とはようするに何なのか

 2008年に初めて、保守派の政治哲学者ポール・ゴットフライドが、主流派の保守主義を拒む反体制派の極右イデオロギーを指して「オルタナティブ・ライト」という言葉を使った。ゴットフライドはそれ以前にも、後に共和党の中心勢力となった「ネオコンサバティブ(新保守主義)」と距離を置くために「ペイリオコンサバティブ(旧保守主義)」という造語を生み出したことがある。

 米レグネリー出版社の創業家出身で資産家のウィリアム・レグネリーは2005年、白人ナショナリストのシンクタンクとして「国家政策研究所」を設立した。11年、若くして極右の新星となったスペンサーが所長に就任した。その1年前、彼は「オルタナティブ・ライト」というウェブサイトを立ち上げ、オルト・ライト運動の急先鋒になった。

 当時、スペンサーはオルト・ライト支持者の間で「カックサバティブ」という用語を流行らせた。この造語は、合衆国憲法や経済市場の自由化、個人の自由など、真っ先に抽象的な原則を取り上げようとする「裏切り者」の保守派を指した呼び名だ。

 一方でオルト・ライトは国家や人種、文明、文化といった概念をより重視する。スペンサーは白人によるナショナリズムを正当な政治運動の地位へ押し上げることに注力した。白人の優位性にはあえて触れず、他の人種から隔離された白人の故郷創設を訴えている。

異なる勢力がひしめく

 アメリカの白人ナショナリストにとって、主要な関心事は移民問題だ。彼らは出生率について、第3世界から来た移民の割合は高く逆に白人女性は低いと指摘し、放置すれば卓越した民族としての白人の存在そのものが脅かされてしまうと主張する。

 だが白人と他人種の人口比率の逆転という問題でさえ、白人ナショナリスト運動のなかで見解は一致しない。より上流階級にあたる勢力は、白人が自分たちの利益を守るのに必要なある種の図々しさを失ったために、時代の流れとともに出生率の低下に至ったのだと議論する。

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