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オルト・ライト(オルタナ右翼)とは何者か

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月12日 16時0分

 対照的に、陰謀論に傾倒する一部のグループは、白人をマイノリティに貶めるためにユダヤ人が仕組んだ罠だと示唆する。ユダヤ人の狙いは、歴史的に最も強力な白人という「敵」を弱体化させ、単なるマイノリティへと極小化させることだという。

 ユダヤ人陰謀論の代表的な論客が、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の元教授で心理学者のケビン・マクドナルドだ。1990年代半ばから終わりに出版した3つの関連著書で、ユダヤ人と反ユダヤ主義者の集団行動を解明する「進化心理学」に関する仮定を発展させた。

 マクドナルドによると、反ユダヤ主義が生まれた背景には、ユダヤ人が不正を働いているという神話以上に、ユダヤ人とキリスト教徒など非ユダヤ人の間の現実の利益相反があったとする。そのうえでユダヤ人の知識層や活動家や指導者らは、非ユダヤ人社会を人種や民族、性別で分断させたいのだとする持論を展開した。あれから四半世紀が経ち、マクドナルドの研究は白人ナショナリストのオンラインフォーラムで普及、称賛されている。

インターネットで影響力を拡大

 当初は限定的だった白人ナショナリストの影響力がより広範囲に及ぶのを可能にしたのが、ネット上のサイバー空間だ。4chanや8chanのような匿名のネット掲示板(日本の2ちゃんねるにあたる)をはじめ、破壊的で閉ざされた言論空間が幅を利かせたことで、若年層の白人ナショナリストたちがコメントや画像を匿名でシェアや投稿できるようになった。米紙USAトゥデイやワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなど主流のニュースメディアのサイトですら、記事や執筆者に対する匿名の誹謗中傷(トロール)が横行している。

 さらに重要なのは、新しくネットに出現した新興メディアが主流メディアに戦いを挑んでいる点だ。代表格として保守系ニュースサイトの「ドラッジ・レポート」や陰謀論を扱う「インフォウォーズ」などが挙げられるが、最も顕著なのが「ブレイトバート・ニュース」だ。

 政治と文化の両方に影響を与える保守系メディアを目指し、アンドリュー・ブレイトバートが2007年に設立。ブレイトバート自身は、アメリカの保守勢力が移民問題や多文化主義、政治的な公平さを表す「ポリティカル・コレクトネス」などの分野で譲歩を重ねてきたのが不満だった。2011年には、「政治はまさしく文化の下流になり下がった」と記した。

 ドナルド・トランプが大統領候補になったことで、白人ナショナリストを含めまったく共通点のなかった集団が、一人の候補者を中心に団結できた。ただしオルト・ライト運動が持つイデオロギーの多様性を考えると、彼らを白人至上主義のナショナリストとして一括りにするのは重大な過ちだ。

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