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続く粛清、北朝鮮の駐英国公使亡命と張成沢殺害の「接点」

ニューズウィーク日本版 / 2017年2月3日 17時11分

こう記されていた。<黄長※は人間でなく、犬より劣る獣だということを自らあらわにした。人生も残り少ない74歳にもなって、党と首領(金日成主席)の信任に背いただけでなく、息子、娘や孫たちまで全てを捨ててしまった彼をどうして人間と呼べるだろうか。(中略)黄長※は地主の息子で、日帝時代に学んだ古い知識人だ。黄長※は主として教育部門と対外宣伝部門で仕事をしてきた。党、国家、軍事秘密を知る事業に関係したことはない。彼からいわゆる「秘密」が出たとしても、南朝鮮かいらいの脚本に沿ったデタラメな話だ>

何としてでも黄氏の価値をおとしめ、少しでも幹部らの動揺を抑えようとしているのがよく分かる。黄氏は金日成が創始した「主体思想」の理論的主柱でもあっただけに、亡命を許したことで父のメンツも汚したことになり、他ならぬ金正日が最も衝撃を受けていたと推察される。黄氏が亡くなった10年10月9日は、金正恩が朝鮮労働党代表者会でデビューした直後のことだった。



張粛清の実態、一部明らかに

さて、テ・ヨンホ氏である。ついこの間まで北朝鮮のエリート官僚だったとは思えない物腰の柔らかさ、洗練されたインテリ紳士といった感じである。甘いマスク、低い声もいい。びっくりしたのは得意ののどまで披露してみせたりもした。

美女の脱北者を集めたトーク番組などにもゲスト出演し、ロンドンではいつもこの番組をインターネットで見ていましたよ、などとサービストークも忘れない。堅物だった黄長※氏とはまるで雰囲気が異なり、タレント性抜群なのである。

そのテ氏、記者会見では「1兆ドル与えようと、10兆ドル与えようと金正恩は核兵器を諦めない」と断言し、金正恩の統治スタイルを「恐怖先行統治」と呼んだ。そのすさまじさの一例として朝鮮労働党行政部長だった張成沢氏の粛清を挙げた。13年12月、金正恩は叔父で後見役でもあった張氏に「現代版宗派分子」のレッテルを貼り、処刑してしまった。形ばかりの裁判はあるにはあったものの、事件の真相は今なお謎に包まれている。

テ氏はこう述べた。「金日成、金正日の時代にも粛清はあったが、そこには名分はあった。金正恩時代になって粛清の理由がよく分からない。大部分が即興的な粛清だ。張成沢事件は北朝鮮の歴史上、類例が無いものだ。労働党の行政部を丸ごとつぶしたのだから。副部長、課長は皆、銃殺され、構成員、家族は全て収容所へ送られた。写真の削除作業も行われた。11人の幹部が消された。段階的に粛清は続いている。金正恩は3年間で処理しろと命じた。公職者には自白書を提出させ、自らの一生で張成沢とその一党とどんな関係があったかを洗いざらい書き出させたのだ。もし後に何か判明すれば、むごたらしいことになる」(1月3日放送の「TV朝鮮」新年特別番組で)

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