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続く粛清、北朝鮮の駐英国公使亡命と張成沢殺害の「接点」

ニューズウィーク日本版 / 2017年2月3日 17時11分

この切手カタログにはさらに奇妙なことがあった。13年に発行された「平壌民俗公園」のオープンを記念した小型シートが収録すらされていないのだ。この公園は張氏が主導して建設されたもので、粛清からちょうど3年になる16年暮れまでに解体作業を終えたという。テ氏の証言とも符合する。

対抗措置を準備?

一体、金正恩は張成沢氏の何に怒り、恐れたのか?

国家安全保衛部特別軍事裁判に関する報道(13年12月13日の労働新聞)にはこうある。

<張成沢は、全党、全軍、全人民の一致した念願と意見に従い、敬愛する金正恩同志を偉大な将軍さまの唯一の後継者として高く推戴するという重要な問題が討議される時期に、他の考えをしつつはかりごとをめぐらし、領導の継承問題を陰に陽に妨害するという絶対に許し難い大逆罪を働いた>

<張成沢のやつは政変を起こす時期と政変以後にどのようにしようとしたかについては「時期は特に決めていなかった。だが、一定の時期になって経済が完全に落ち込み、国家が崩壊寸前になれば、私がいた部署と全ての経済機関を内閣に集中させて私が総理をしようとした。その後、これまでさまざまな名目で確保した莫大(ばくだい)な資金で一定の生活問題を解決してやれば、人民と軍隊は私に万歳を叫ぶであろうし、政変は順調に達成されると打算した」と白状した>

消された2人の女優は、こうした張氏とどこかの人脈でつながっていたのだろう。だがそれにしても根こそぎ粛清するのは首をかしげざるを得ない。人民の誰もが知る有名な女優まであっさり消してしまえば、うわさが広がり、うわさがうわさを呼んでいくはずだ。

金正恩の恐怖先行統治がうまくゆくとは思えない。核・ミサイルで強硬姿勢を見せるものの、金正恩の内心は決しておだやかではないのではないか。テ氏のさらなる暴露が続けば、金正恩も何らかの対抗措置を取るかもしれない。既に幹部向けの秘密演説をしているかも可能性も否定できない。

[執筆者]
鈴木琢磨(すずき・たくま)
毎日新聞社部長委員
1959年大津市生まれ。大阪外国語大学朝鮮語学科卒、82年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」時代から北朝鮮ウオッチを続け、現在、毎日新聞社部長委員。著書に『金正日と高英姫』『テポドンを抱いた金正日』、佐藤優氏との共著に『情報力』などがある。


※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。




鈴木琢磨(毎日新聞社部長委員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載


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