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オフィスデザインに訪れた「第四の波」とは何か

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月26日 18時36分

当時、ヨーロッパ、特にドイツ、オランダ、スカンジナビアなどの北部では人手不足が続いていました。職場の管理者は工場や鉱山との人材獲得競争に打ち勝つため、より高い賃金ではなく、より良質の労働環境を提供しようと考えました。そこで社会的なネットワークや人と人の相互関係を考慮した居心地のいい楽しい環境――すなわち校舎のデスクのような画一的配置でなく、人が働きやすいレイアウトが求められるようになったのです。オフィスのユーザー指向への転換がここで行われました。

ソーシャル・デモクラティック・オフィスが生み出したのは、キャンパスのような環境です。池や噴水、大通り、中央アトリウム、植栽といった、多彩な要素で構成することができます。グラクソ・スミスクラインのロンドン本社** はその1つで、中央通りがあり、広場があり、店舗がある。街としてのオフィスであり、社会的なコミュニティといえます。ストックホルム郊外のSAS(スカンジナビア航空)本社もそう。1988年にニールス・トルプが設計したもので、ソーシャル・デモクラティック・オフィスの青写真となりました。さらにさかのぼれば、1974年にオランダで建てられた、ヘルマン・ヘルツベルハーの手による保険会社セントラルビヘーアのビルもあります。

また、仕切りを設けずにオープンな空間を提供するオフィス・ランドスケープも、ソーシャル・デモクラティック・オフィスの非常に良い例です。

日本では今でもソーシャル・デモクラティック・オフィスよりテーラリスト・オフィスが多く見受けられるように思います。信頼関係の構築より監督のしやすさに重きを置く日本らしい、マネジメント上の倫理的配慮がうかがえます。



デジタル技術を使って人を追跡するネットワークド・オフィス

第三の変化は2000年代に入ってから起きました。「ネットワークド・オフィス」の台頭です。

人々はスマートフォンやタブレットを活用して、いつでもどこでも仕事ができるようになりました。ワークスタイルの変化はオフィス設計の性質も劇的に変えます。それが、オフィス内のヒトとモノをネットワークでつなぎスマート化するネットワークド・オフィスを生んだのです。

デスクスペースは狭くなる一方で、広いホスピタリティスペースが確保されるようになりました。それもバーやホテルラウンジのようなラグジュアリーな空間です。というのも、ネットワークド・オフィスでは、単にデスクに座るためでなく、人と会うためにオフィスにやってくるからです。モバイル端末があれば、どこからでもデータにアクセスできるわけですから。

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