オフィスデザインに訪れた「第四の波」とは何か
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月26日 18時36分
とはいえ、ネットワークド・オフィスがオフィスの最終形かといえば、そうではないでしょう。働き方は再び変化しますし、したがってオフィスも変化するはずです。人間の仕事は1000年続いていますが、現代のオフィスの歴史はわずか150年に過ぎません。家内制手工業の時代には人は自宅で働き、産業革命期は工場で働くようになりました。オフィスは時代の技術によって支配されるものであり、仕事の連続体の中のほんの一部でしかないのです。
都市から独立せず、都市と深く関係するフュージョンオフィス
いま我々は生活と仕事の関係を問い直す大事な局面に立たされています。どこでも仕事ができるということは、自分自身がオフィスであり、自分が仕事と一体化しているということです。企業は社員の全て、人間としての全てに目を向ける必要があることを認識すると同時に、多額のお金をかけてオフィスビルの中に街を再現する必要がないことに気づき始めました。すぐ外には都市があるのです。「社内に会議室を置かず、ボード・ミーティングを開く時はレストランの一部屋を借りればいい」「30人が1つのデスクを囲む必要があるのは月に一度程度なので、大きな部屋を作る意味がない」と考える企業が増えてきたのです。
この先にはネットワークド・オフィスの次の段階がやってくることでしょう。「フュージョンオフィス」あるいは「ミックス・オフィス」とでもいえばいいでしょうか。それは都市から独立したものではなく、都市と深く関係するものです。
その流れはすでに見え始めています。今の郊外の企業キャンパスは若いワーカーに不評です。彼らは店舗やレストランに近い市中心部にいたいのです。そういう声を受けて都市に戻ってくる大企業も見受けられます。知的生産性が求められる施設を郊外に築くという戦略は、今の時代にはそぐわないのです。
大手不動産開発会社の多くは、フュージョンオフィスを新しいビジネスのスキームとしてとらえています。イギリスでは ブリティッシュランド、オーストラリアでは ミルバックやレンドリースなどが取り組みを進めています。ニューヨークのハドソンヤード再開発プロジェクトでも、住宅、ホテル、小売店、オフィスを混在させて区域に新しい価値をもたらそうとしています。素晴らしいオフィスを作るだけでは不十分なのです。夕方や週末を楽しく過ごせるような、そこで働くことを誇りに思えるような、人が集まる仕掛けが求められています。
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