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ロシアW杯をプロパガンダに利用するプーチン

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月19日 16時0分

「ワールドカップは、プーチン大統領の永遠なる治安帝国の祝典になるだろう」と言うのは、反プーチン派の女性パンクバンド「プッシー・ライオット」のマリア・アリョーヒナだ。「観客たちは、デモの参加者が殴られ、刑務所や警察署で拷問され、政治犯がとても多い国にいることを認識してほしい」

ウクライナの映画監督オレグ・センツォフはそうした政治犯の1人。テロを計画した容疑で15年に軍事裁判で懲役20年の実刑判決を受けたが、センツォフに言わせれば、それは彼がロシアによるクリミア併合に抗議したことへの報復だ。

検察は、センツォフと共同被告のアレクサンドル・コルチェンコが与党・統一ロシアのクリミア支部と共産党事務所の入り口に何度も放火したと告発した。2人とも無罪を主張しており、反政府派は容疑を裏付ける証拠が薄弱だと主張している。



人権団体は、ウクライナ人70人近くが政治犯として、ロシアや占領下のクリミアで監禁されていると訴えているが、ロシア政府は否定している。W杯開催1カ月前の5月14日には、獄中のセンツォフが「ロシア領内で拘束されているウクライナ人政治犯全員の釈放」を求めてハンガーストライキを始めた。

他の活動家も活発に動いている。5月には14の人権団体がFIFA宛ての公開書簡に署名し、人権擁護団体「メモリアル」のチェチェン支部長オユブ・ティティエフを解放するよう、ロシアに圧力をかけてほしいと呼び掛けた。

なおチェチェンでの試合は組まれていないが、首都グロズヌイではエジプト代表チームがキャンプを張っていた。

来賓はいなくてもいい

60歳のティティエフは今年1月、大麻約170グラムを所持した容疑でチェチェン警察に逮捕された。彼の支持者によれば、これはチェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長によるでっち上げだ。チェチェンのアプティ・アラウディノフ副内相はこれまでも、同様の手法で警察を動かし、カディロフの「敵」を何人も陥れてきた。

メモリアルは旧ソ連の反体制派が1989年に設立した団体で、ソ連時代の弾圧だけでなくプーチン時代の権力乱用も暴き、国際的に高く評価されている。

チェチェンにおける最近の弾圧は、昨年12月にカディロフのインスタグラムのアカウントが閉鎖されたことがきっかけとされる。「アカウントの閉鎖は、カディロフのイメージを損ねるものだ」と、メモリアルの創設者オレク・オルロフは言う。「カディロフは自分の邪魔をする者は抹殺せずにおかない」

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