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ロシアW杯をプロパガンダに利用するプーチン

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月19日 16時0分

17年に新たな人権ポリシーを採択したFIFAはティティエフの逮捕を気に掛けているとしたものの、エジプト代表の拠点をグロズヌイから移せという要求は拒否した。

メモリアルは、ティティエフが国際的に注目されることによって、プーチンがチェチェン当局に彼の釈放を命じざるを得なくなることを願っている。メモリアルのチェチェン支部を運営していたカティヤ・ソキリアンスキアは、「W杯の成功はロシア政府にとって非常に重要だから」と言う。「国際機関、特にFIFAがティティエフの事件を大きく取り上げてくれれば、プーチンが介入して彼を解放するかもしれない」

ロシアの反政府勢力の一部がワールドカップを利用して抗議の声を上げる一方、国際的なボイコットを呼び掛けて、プーチンのもくろみを台無しにしたい反体制勢力もある。

だが代表チームの派遣を拒否した国はない。3月に起きた元二重スパイの在英ロシア人セルゲイ・スクリパリの暗殺未遂事件でロシアを非難しているイギリスも、ワールドカップに出場するチャンスを失うことには二の足を踏んだ。イングランド代表が大会をボイコットする代わりに、イギリスは公式代表団の派遣を拒否。王室も今回の大会には顔を見せない。

しかし、プーチンはそんなことは気にしない。「彼は西側との険悪な関係に慣れている。来賓はいなくても構わない。重要なのはサッカー選手が来ることだ」と、カーネギー国際平和財団のコレスニコフは言う。



ロシアの力を世界に誇示

もう1つ重要なことは熱狂的なファン、とりわけロシア人ファンのマナーだ。近年、スタジアムで極右のサポーターがナチスの紋章「ハーケンクロイツ」をスタジアムで掲げる事件が起きている。10年には北カフカスのイスラム系若者グループによるファン殺害事件をきっかけに、1000人以上のフーリガンや超国家主義者がモスクワの赤の広場で暴動を起こした。

ロシアのサッカー関係者は、人種差別対策としていくつかの措置を講じている。17年にはロシア代表チームの元キャプテンだったアレクセイ・スメルティンを差別撤廃大使に任命した。

だが問題は解消されていない。3月にサンクトペテルブルクで行われたフランスとの国際親善試合では、ロシアのサポーターがポール・ポグバやウスマン・デンベレなどのアフリカ出身選手に人種差別的なやじを飛ばした。FIFAはロシアサッカー協会に3万ドルの罰金を科した。

「ここ数カ月の事件は、ロシアのファン文化に人種差別がどれほど深く根付いているかを示している」と、サッカーにおける人種差別に対する監視活動を行うパベル・クリメンコは言う。

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