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モーリー・ロバートソン解説:日本人が中東を理解できない3つの理由

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月5日 17時30分

加えてイスラエルの保守政党を強く支持する人たちは、批判的な意見を唱えるジャーナリストを時に「anti-Semitic=反ユダヤ的である」と攻撃することもあります。欧米メディアで「反ユダヤ的」とレッテルを貼られるのは致命的なので、パレスチナ問題を報じるときも神経質になります。欧米メディアにとってイスラエルの扱いは、日本でいうと皇室報道ぐらい注意を要するのです。

例えば、イスラエルにもパレスチナとの融和を唱える人がいてデモを起こしたりします。彼らのそうした主張や活動をフラットに報じればいいと思うのですが、それができない。そこに踏み込んでしまうと、「そもそも正統な国ではない。地図から消してしまえ」という、イスラエルの存在自体を根本から否定する考えを持つ人々の意見に同調してしまう恐れがあるからです。

最近ではアメリカの「オルト・ライト」と呼ばれる極右思想に共鳴する人たちが、イスラム原理主義やイランに対抗する駒としてイスラエル右派を応援しています。さらにアメリカの福音派を信じる数多くの人も宗教的な理由でイスラエル右派を支持しています。それらの座布団がどんどんと積み重なっていくなかで、次第にイスラエルが報道上のアンタッチャブルになっていく傾向がある。要するに、とても面倒くさいんですよ。

アメリカからすると、地政学的にイスラエルがこの地域を抑えてくれるので、自分たちが大規模な中東戦争に引きずり込まれずに済む。イスラエルは、アメリカの敵対国に対して日々のスパイ行為や小さな攻撃などを代わりにやってくれていますから。そうした、アメリカとイスラエルの持ちつ持たれつの関係があるので、欧米メディアはイスラエルの極右化した政治家たちが差別的な暴言を放った場合であっても、たたくときには慎重になる。

一方の反イスラエル陣営は、イラン系メディアであれ、アルジャジーラであれ、かなりゆがんだイスラエル批判をします。確かにイスラエルは、ガザとヨルダン川西岸でパレスチナ住民の封じ込めや交通規制、テロに対する過剰報復などを行っていますが、反イスラエルメディアはそこだけを強調してしまう。それが行き過ぎると、そもそもイスラエルには国家としての正統性がないと批判されていると映るので、欧米メディアでは容認できない。

結局、イスラエルの正統性をめぐる問題に関わるので、親イスラエルと反イスラエルの陣営間に妥協の余地はない。この分断がガセネタを含めた報道のゆがみの温床になってしまうのです。

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