プーチンがもくろむアフリカ進出作戦
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月6日 15時45分
だが政情不安定な貧しい国々に大量の武器を送り込めば悲惨な結果を引き起こしかねない。17年3月に救援団体オックスファムが公表した報告書によれば、アフリカには推計1億個の軽火器類が無統制な状態で存在し(その多くが中国またはロシア製)、紛争の長期化や貧困の深刻化の要因となっているという。
中央アフリカも例外ではない。今年7月に国連の専門家パネルは、中央アフリカの治安部隊がロシア製武器の供給を受けたことを受け、反政府勢力が武器調達に走っていると警告した。
アフリカに対する影響力が最も強かったのは冷戦時代だ。当時も旧ソ連の情報機関KGBの工作員がアフリカ大陸各地に飛び、共産ゲリラに武器を渡していた。だがソ連崩壊後の90年代には影響力も低下。今も経済の停滞から使える金は限られており、売り込むようなイデオロギーもロシアにはない。
「ソ連時代のようにあれこれ指図することはできない」と、アフリカ駐在経験のあるロシアの外交官は匿名で語った。「わが国の指導者たちにとってアフリカは、影響力をめぐるアメリカとの戦場だった。ロシア(ソ連)はかつて大物のパトロンだったが、今の政府に同じような資金力はない」
トランプ米政権が国外での外交的・軍事的な活動を縮小する一方で、プーチンのアフリカに対する夢は膨らんでいる。アフリカ諸国の安全保障上のパートナーになることを通して国際的孤立を打破し、イスラム系武装勢力の脅威と戦うとともに、アフリカ大陸の天然資源から利益を得ようというのだ。
エジプトからリビアに空爆?
こうしたロシアの動きは、冷戦後のアフリカの勢力図を変えつつある。例えばNATOは90年代半ばから、モロッコやアルジェリアをはじめとするサハラ砂漠周辺の国々とテロとの戦いのために協力関係を結んできた。だが近年ではこうした国々とロシアとの関係は改善している。
なかでも特記すべきはエジプトとの関係の変化だろう。エジプトは70年代にソ連に背を向け、アラブ世界におけるアメリカの最も緊密な同盟国となった。だがアメリカの影響力が弱まるにつれ、エジプト政府はロシアと接近。エジプトでロシアが原子力発電所を建設したり、ロシア企業が欧州やアフリカに進出する玄関口となる工業地帯を開発する計画が進んでいる。
エジプトはロシア軍機がエジプトの空域や空軍基地を使用することも認める方針だ。つまり、北アフリカにおけるロシアの軍事的プレゼンスは旧ソ連のブレジネフ政権以降最大となる。
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