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プーチンがもくろむアフリカ進出作戦

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月6日 15時45分

ロシア系の傭兵部隊は、ウクライナやシリアの秘密作戦における暗躍ぶりで悪名高い。その多くはロシア政府と密接な関係を持つ民間軍事会社ワーグナー・グループの傘下にある。

同じような動きは中央アフリカでも報告されている。ロシア外務省によれば、バンギに派遣された175人の教官のうち170人は「民間人の教官」だという。

実際、ロシア系兵士が中央アフリカ北東部で現地の反政府勢力と接触した模様を撮影した動画もある。ダイヤモンドと金が豊富なこの地域は、人権団体から戦争犯罪で非難されている武装グループ、中央アフリカ共和国復興人民戦線(FPRC)が支配している。

フランスの英語ニュース放送フランス24によれば、FPRCの軍事指導者アブドゥライ・ヒセーヌが今年5月、ロシアのトラック18両の車列を停止させ、捜索を行った。その結果、この車列は「ロシア関連の準軍事組織55人」と医療機器のほかに、軍用装備品も運んでいたことが発覚した。この種の物資輸送は「われわれの合意に含まれていない」と、手続きにのっとり軍用品を没収したヒセーヌは主張する。

トラックの車列はその後、反政府勢力の拠点がある激戦地の中部ブリアに向かった。現地で彼らを出迎えたFPRCの高官イブラヒム・アラワドは、「ここでロシア人と会った」と本誌の取材に答えた。「彼らは『人助けがしたい、病院を建てたい』と言う。本当の狙いは分からないが」

ロシアは資源取引を通じたビジネス上の利益も狙っているようだ。昨年11月のフランスの調査ではバンギにある民間軍事会社と、「宝石採掘」に特化した鉱山会社のロシア人経営幹部の結び付きが明らかになった。



貴金属類の輸出は規制されているが、反政府勢力は取引に熱心だ。「誰かがビジネスをやりたいと言ってきたら、拒否するわけにはいかない」と、アラワドは言う。

この種のロシア系企業は、ロシアのシリア介入でも稼いでいる。ワーグナーのフロント企業とみられるエブロポリスは、テロ組織ISIS(自称イスラム国)から奪った油田・ガス田から出る利益を傭兵たちに分配している。同社はプーチンの側近でもあるサンクトペテルブルクの起業家エフゲニー・プリゴジンの影響下にある。

シリアと中央アフリカは、ロシアを通じて思いのほか深くつながっている可能性がある。ロシア政府がアサド政権から借り受けた空軍基地では、ロシアの輸送機がシリアからスーダン経由で中央アフリカへ貨物と人員を運んでいるようだ。

中央アフリカの大統領報道官は、鉱物資源に関するロシア側との正式な契約はないと主張する。しかしロシア外務省は「鉱物資源探査における提携の大きな可能性」を強調している。

ロシア側は隠された意図などないと主張するが、反政府勢力は警戒心を強めている。「プーチンはアフリカのどこかに足場が欲しいのだ。ここには多くの資源がある」と、アラワドは言う。「彼は信用できない。われわれは第2のシリアにはなりたくない」

<本誌2018年11月06日号掲載>



※11月6日号は「記者殺害事件 サウジ、血の代償」特集。世界を震撼させたジャーナリスト惨殺事件――。「改革」の仮面に隠されたムハンマド皇太子の冷酷すぎる素顔とは? 本誌独占ジャマル・カショギ殺害直前インタビューも掲載。


ジャック・ロシュ(ジャーナリスト)、オーエン・マシューズ(元モスクワ支局長)


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