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イギリスが欧州の「孤島」になる日

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月22日 17時20分

政府は市民の騒乱が起きた場合に備え、ブレグジット後の2カ月間は警察官の休暇を許可しない方針を検討している。軍隊に待機命令が出て、食料や医薬品、燃料などの配給に備えているとの報道もある(テリーザ・メイ英首相は否定)。

EU離脱が現実になるまで、まだ4カ月ある。離脱協定は年末までにEU側と合意できればいい。しかし国内外の抵抗勢力を説き伏せ、円満な協議離婚に持ち込むために十分な時間とは言えない。



想定される「最悪の事態」

実際、与党・保守党も内閣も強硬派(合意なしでも強硬離脱)と穏健派(EUとの連携を重視)、そして反対派(国民投票の再実施を要求)に分裂している。野党勢力は合意なき離脱の回避を求め、世論は今も大きく離脱の賛否で割れている。

メイ首相は従来、合意なき離脱も「この世の終わり」ではないと主張してきた。しかし今回の暫定合意案が議会の承認を得られなければ、いよいよ合意なき離脱の可能性が高まる。

国民のパニックを防ぐために政府が公表した「合意なき離脱への備え」という文書も、結果的には近い将来への不安をあおるものとなっている。例えば、いまEU域内で暮らしている約130万の英国民は来年4月以降、本国の銀行や年金サービスを利用できなくなる恐れがある。国内企業には新たな通関業務への対応が、製薬会社には輸入が滞る恐れから感染症の治療薬などの十分な在庫の確保が求められている。

昨年11月、政府はEU離脱に伴う対策の資金として、合意の有無にかかわらず30億ポンド(約39億ドル)の追加予算を確保した。これで臨時職員の人件費から、荷待ちトラックの混雑を緩和するために整備する駐車場の建設費までを賄う。

EU離脱省の広報担当者は本誌に、「包括的な」準備で「個人や企業への短期的な混乱のリスク」を最小限に抑えると語ったが、政府の予算執行を監査する会計監査院は、離脱期限の3月までに対策が間に合うか疑問だとしている。

ハードブレグジット(合意なき離脱)で最も心配される点の一つが、日々の物資の供給に対する影響だ。EU加盟以来の数十年間、人や物はイギリスの国境を越えて自由に行き来してきた。この便利な仕組みはなくなる。通関手続きと入国審査が必要になるから、国境は混乱に陥る可能性がある。

イギリスの貿易は、自由貿易協定を締結していない国同士の貿易の原則を定めたWTO(世界貿易機関)のルールに頼らざるを得なくなる。そして、より多くの規制やコスト負担に直面することになる。

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