イギリスが欧州の「孤島」になる日
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月22日 17時20分
空の便の混乱は特に深刻だ。EUは現在、イギリスの航空会社のアメリカ、カナダなどヨーロッパ以外の国も含む44カ国への運航を統括しており、これがイギリスの空の交通量の約85%を占めている。
WTOのルールは、航空便には及ばない。だから国際線の運航を続けるには新たな取り決めが必要になる。政府も国内の主要な空港も、合意なき離脱はイギリスの空港機能を麻痺させかねないと警告している。
ただしイギリスの航空会社を代表する業界団体エアラインズUKの政策・公共問題担当ロブ・グリッグスは、国際線の運航が不可能になる事態までは想定していないという。
最悪、合意なき離脱となった場合でも、EUまたは個々の加盟国との間で「必要最小限の」協定を「かなり早い段階で」締結することができるという。そうすれば、後でより詳しいことが決まるまで、無事に航空機を飛ばし続けることができる。「そこには自信がある。だが、それで満足というわけではない」と、グリッグスは言う。
港湾周辺は非常事態に
一方、荷待ちトラックの大渋滞が予想される港湾周辺は、それほど楽観できる状況ではなさそうだ。イギリス政府は、主な港の近くにある高速道路を一時的に閉鎖し、巨大な駐車場に転用する計画を検討している(きっと恐怖の大災害映画の一場面みたいな光景になる)。
政府はまた、主要な港の混乱を想定して、フェリー船団をチャーターして重要物資の輸送に充てることも考えている。
年間250万台もの大型トラックが行き来するドーバー港では、通関に2分余計にかかるだけで(ロンドンと港を結ぶ)高速道路M20に30キロ近い渋滞が発生すると予想される。ちなみに英食品飲料連盟のイアン・ライトによれば、通関検査には最大で7~8分かかるという。
渋滞に巻き込まれた運転手にとって、問題は長い待ち時間だけではない。政府の公表した「合意なき離脱への備え」によれば、イギリスの運転免許証はヨーロッパ各国で通用しなくなる可能性がある。そうであれば、英仏海峡を越えて荷物を運ぶドライバーは出発前に、国際運転免許証を取得しておかなければならない。もちろん、それには費用がかかる。
ドーバー港から3キロほど北にあるガソリンスタンドにいたトラック運転手のジェイミーは本誌に、ブレグジットの不確実性は「かなり気になる。いったいどうなるのか誰も分かっていない」と語り「残念だが、私たちにできることはあまりない。現実を受け入れ、様子を見る。待つしかない」と続けた。
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