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イギリスが欧州の「孤島」になる日

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月22日 17時20分

もしも国境地帯でトラックが足止めを食えば、積み荷の食料も一緒に立ち往生する。ちなみに英国内で消費される食料の約3割はEUからの輸入品だ。

9月には環境・食料・農村省に政務次官職が新設された。EU離脱に備えて食料の供給を確保することがその職務だ。ただし政府は表向き、さほど心配はないとしている。

しかし業界サイドは警鐘を鳴らし続けている。合意なき離脱なら食品小売業界のコスト増は最大で93億ポンドとの推定もある。いずれは価格に転嫁され、消費者が負担することになる。

食品飲料連盟のライトによると、見通しは「大変厳しく」、業界は憂慮している。「以前は人騒がせもほどほどにと言われたが、本当に大変なことなのだ」。とりわけ小規模な生産者は致命的な打撃を受けかねない。

買い置きできない薬も

ある日突然、国内各地のスーパーマーケットの棚が空っぽになるわけではない。しかし日々の買い物で選択肢が減ることは覚悟すべきだろうとライトは言う。本格的に供給が途絶えることになれば、「過去40年の間にイギリスの消費者が当たり前と思うようになった選択肢と製品の範囲が大幅に、しかも急速に変化するだろう」。

だから多くの市民が「最悪の事態」に備え始めた。ロンドンで広告関係の仕事をしているグラスゴー出身のジェニファー・マケンヒル(36)は、国民投票ではEU残留に賛成した。離脱が決まっても、まさか「ブレグジット非常グッズ箱」を用意することになるとは思っていなかったが、さすがに数カ月前からは普段より多めに買い物をするようになったという。

いざというときのため、食品は余分に買い置きしている。パスタ類や缶詰のほか「洗面化粧用品、鎮痛剤、シャンプー、歯磨きなど、貧しい人のためのフードバンクのような品ぞろえ」だとマケンヒルは本誌に語った。数年前なら、こんな準備をするのは「精神的にアブナイ人」と感じただろうとも。

しかしEU離脱にまつわる不確実性に気付いて考えを変えたそうだ。「計画性がない。政府は市場の物流と供給チェーンの仕組みをろくに理解していないようにみえる」と、マケンヒルは指摘した。「想定内で最良のシナリオの場合、買い置き品は使わないで済む。いずれにせよ、1年くらいで使い切れる量だ」



慢性の病気などを抱える人の場合はもっと深刻だ。本人も家族も先行きが心配でならない。英国製薬産業協会(ABPI)によると、イギリスがEU域内から輸入する医薬品は毎月約3700万包。イギリスからEU諸国への輸出は約4500包だ。

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