60 歳を迎えて老後の生活資金を考える
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月15日 19時0分
また、年金も受給金額が多いと課税所得が多くなり累進で税率も上がるため、終身年金にして年金年額を低く抑え節税するというメリットもある。いくら長生きしても貯蓄がなくならない資産家である場合は別だが、「老後の生活資金確保」という目的に照らし、一定のインカムフローが死ぬまであるのは、安定した老後生活にとって大きな支えになると思う。
そういう意味で「一時金」を非課税の範囲内で最大限もらうというのも合理的な考え方であるが、終身年金が選べるのであれば、「一時金」は最小限にし、公的年金の補完として「終身年金」を最大化するということも検討に値すると思われる。
次に運用継続をどうするかだが、「一時金」で全額受け取る場合は当然のことながら運用は中止となる一方、「年金」で受け取る場合は、運用を継続するかどうかを決めなければならない。70 歳までは運用を継続できるが、60 歳以降の 10 年以内の運用でもあり、あえてリスクをとって、運用継続をしなくても良いと思う。勿論、資産運用に自信のある人は、非課税運用というメリットを生かし、運用継続しても良いと思う。ただ、「老後の生活資金確保」という観点からは、あまりリスクをとって無理をする必要はないと思う。
最後に、「年金」の受給開始をいつからにするかであるが、給与所得がある間は受給開始せず、退職後に受給を開始するのが無難であろう。確定拠出年金では、終身年金を選んだとしても、公的年金ほどの繰り下げメリットがないからだ。退職後の企業年金や公的年金等の所得が多い場合は、節税のために適宜、受給開始時期を遅らせれば良いと思う。受給したい時に手続きすれば受給が始まる。但し、70 歳までに必要な手続きをしないと 70 歳時に「一時金」で支払われてしまうので、くれぐれも忘れないように気をつける必要がある。
3――老後の資産運用をどうするか
老後の資産運用をどうするかは実に難しい問題である。各人の資産保有状況、給与、公的年金、企業年金、確定拠出年金等から得られるインカム等の経済的な側面に加えて、各人が資産運用についてどれだけ詳しいかという金融リテラシーの程度、健康状況、家族構成等、実に千差万別である。
万人共通の資産運用というものはないので、各人が各人に適した資産運用をするしかない。勿論、これは老後の資産運用に限った話ではない。
以前に「正しい投資とは何か~投資の勝ち負け~」という題目でレポートを執筆したので、参考(※)にしていただきたいが、資産運用はそう簡単ではない。
※2017 年 08 月 30 日執筆:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=56523?site=nli
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