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北朝鮮で続く食糧不足と賄賂、抑圧の悪循環

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月4日 19時40分

<多くの人々が闇商売の摘発を避けたり、中国への密出国を黙認してもらったりするために役人たちに賄賂を贈る>

北朝鮮の一般国民は、役人に袖の下を贈らなければ生きていけない――国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が5月28日に発表した報告書は、そんな厳しい現実を指摘している。

214人の脱北者への聞き取り調査を基にした報告書によると、北朝鮮では「食糧不足と汚職と抑圧の悪循環」が生まれていて、「人々は日々暮らしていくために賄賂を贈るのが当たり前になっている」という。

北朝鮮では90年代に食糧配給制度が崩壊し、人々は闇市場で食品や必需品を売買せざるを得なくなっている。「政府の指示どおりにしていたら、飢え死にする」と、ある脱北者女性はこの調査に対して語っている。

多くの国民は、闇商売による摘発を避けたり、無償の勤労奉仕を免除してもらったり、出稼ぎのための中国への密出国を黙認してもらったりすることを目的に、役人たちに現金やたばこなどの賄賂を贈る。「金があれば、何をしても許される。人を殺しても罪に問われない」と、ある脱北者は証言している。

OHCHRの報告書によれば、役人が大きな権限を握っていることも贈収賄の横行を助長している。「役人たちは、逮捕や訴追の脅しをちらつかせることにより、苦しい生活を送っている人々から金をゆすり取ることができる」という。

北朝鮮当局は、この報告書を「政治的動機に基づき、邪悪な目的で作成されたもの」と切り捨てる。北朝鮮の在ジュネーブ国際機関代表部はロイター通信に対して、「この種の報告書はでっち上げ以外の何物でもない」と主張している。「(証言している脱北者たちは)生活資金を得るために、あるいは圧力や誘導を受けた結果として、事実無根の話を捏造している」という言い分だ。

現在、北朝鮮は記録的な干ばつに見舞われている。世界食糧計画(WFP)によれば、人口の4割に相当する1000万人以上が既に深刻な食糧不足に直面しているという。北朝鮮側は、アメリカ主導の厳しい経済制裁が食料事情悪化の原因だと批判しているが、北朝鮮の非核化と経済制裁の解除を巡る米朝協議は停滞したままだ。

<本誌2019年6月11日号掲載>


※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。



デービッド・ブレナン

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