1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

なぜ、日本は<異端>の大学教授を数多く生み出したのか

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月27日 19時10分

ところで、役人やメディア関係者らが大学教授に採用されるようになったのはいつ頃からなのだろうか。1990年代の大学設置基準の緩和によって、大学教員に「実務教員」枠が設けられ、新しい天下り先として大学市場が登場したのがきっかけである。

受け入れに積極的なのは、国立大学法人大学では、東京大学、京都大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学等の旧帝国大学であるが、最近では、公共政策大学院等の設置により、行政実務を学生に教授してもらうという大義名分のもとに、早稲田大学、慶應義塾大学、中央大学等の私立の有名大学にも役人出身の大学教授の名前が連なっている。

ここで1つお断りしたい。大学教授の要件として、必要条件は博士号の取得であるが、十分条件としては、大学教授に相応しい、教育業績・研究業績があるかどうかということである。こうした2つの条件を有している社会人教授が大学教授としての資格をもっている人といえるだろう。



ではマスコミで知られている官僚から大学教授に転身した例(過去から現在)を挙げよう。

90年代の住専問題で銀行に多額の公的融資を認めた元大蔵省(現在は財務省)銀行局長の西村吉正氏は、退任後、2007年に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授として就任し、2010年に定年となっている。かつての早稲田大学からすれば、行政権力の象徴である中央省庁の高級官僚を専任教授として迎え入れるなど考えられないことである(彼は早稲田大学教授に就任以前は博士号はなく、就任後、2003年に勤務先のアジア太平洋研究科から博士[学術]を付与されている)。

また、現在でも経済評論家としてテレビ等で活躍している青山学院大学特別招聘教授(2010年就任)の榊原英資氏は、大蔵省の財務官から、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所長・教授、早稲田大学総合研究機構・客員教授(専任扱い)を経て、現職。経済政策の評論では有名であるが、経済政策に関する学術的な著作や論文を読者の皆さんは見かけたことがあるだろうか(榊原氏は政府の在学研修生として派遣されたミシガン大学で博士号を取得している)。

中央大学大学院法務研究科教授の森信茂樹氏も、財務省・財務総合研究所長を経て、2007年から現職。

竹中平蔵氏(元金融・財政担当大臣、総務大臣)の秘書官を勤めた元経済産業省の岸博幸氏は、慶應義塾大学のデジタルメディア・コンテンツ統合研究機構准教授(2006年)を経て、2008年に同大学院メディアデザイン研究科教授となっている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください