抗生物質が効く時代はあとわずか......医療を追い詰める耐性菌に反撃せよ
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月5日 10時20分
複数の研究によれば、世界の抗生物質の大半は処方箋なしで販売されており、これが一因となって、00〜15年にかけて世界の抗生物質使用量は65%も増加した。その結果として出現した耐性菌が、国外旅行者の体内に入り込んで世界中に広まっている。
患者側にも果たすべき役割がある。軽い鼻づまりや尿路感染症でも医師に抗生物質の処方を求める患者がおり、これが抗生物質の乱用に、ひいては耐性菌の誕生につながっている。
マサチューセッツ州の公衆衛生当局は10年以上前から、医師にも患者にも抗生物質の使用量を減らすよう強く促してきた。この取り組みの結果、同州ではこの4年で抗生物質の処方量が16%減少した。これは私たちが負け続けている大きな戦争における、小さな勝利と言えるかもしれない。
だが10年か20年前に容易に予見できたはずの危機に目をつぶってきたことのツケを、私たちは嫌でも払わねばならない。エボラ熱のような致死性の高いウイルスの大流行とまではいかなくとも、耐性菌への感染は今後ますます多くの人の運命を左右することになるだろう。
何しろ1月にコロンビア大学で見つかったような耐性大腸菌を撃退する新戦略の構築に全力で取り組んだとしても、その成果が得られるまでには10 年以上もかかるのだ。
<本誌2019年6月18日号掲載>
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デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)
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