今年の大卒は安定第一? それでもジェネレーションZが秘める大きな可能性
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月25日 12時2分
ペンシルベニア州立大学キャリア支援センターのボブ・オーンドーフも、そうした変化に気付いている。彼の大学でも過去2年、相談の予約受け入れがほぼ限界に達しているという。しかも、1年生からの予約が早々とある。不安に駆られた学生たちは、せっせとインターンにも参加する。
不安をあおっているのが、高額の授業料に見合う給料を稼げるのかと心配する親であるのは間違いない。オーンドーフによると、今やセンターのスタッフは保護者向けの入学相談や新入生への説明会で大忙し。入学希望者と保護者のキャンパス見学では、「投資収益率」といった昔ではあり得ない言葉も飛び交うそうだ。
大卒者の割合が増え、安定した雇用をめぐる競争が熾烈になった今、学位だけでは就職の武器にならない。「大学に入れば安心という時代ではない」と、30年のキャリアを持つオーンドーフは言う。「学生は年上の世代が多額のローンを背負って卒業し、厳しい就職戦線に向かったのを見ている。インターンの実績を積まなければ自分を差別化できないと思っている」
Z世代の不安には複数の要因が考えられる。Z世代の本の執筆のために2年間調査したスタンフォード大学のロバータ・カッツは、彼らの不安は社会の変化が速く厳しいからだと考える。非正規雇用が増えたため、どんな仕事に就いても、いつまで働けるかは見えにくくなっている。ネット環境の発達で、どこでも働ける代わりに、雇用は不安定になった。
Z世代はこうした問題に苦しんでいる。「これまでにない問題と取り組んでいる彼らは大したものだ」と、カッツは言う。「彼らは全く違う環境で育っている。気候変動をよく理解しているし、銃がもたらす現実の脅威と向き合っている。しかも変化は、私たちが経験したものより速い」
メリーランド大学キャリア支援センターのケリー・ビショップは、親の姿勢が影響していると考える。ミレニアル世代の親は、たいてい第二次大戦後に生まれたベビーブーム世代だった。特権とパワーに恵まれたミー・ジェネレーション(自己中心世代)だ。
その姿は67年の映画『卒業』がよく捉えている。ダスティン・ホフマン演じる若者は、両親の友人である年上の女性と関係を持つが、彼女の娘に恋をしてしまう。事態はややこしくなるが、最後は娘の結婚式場に乱入して2人で逃げ出し、ハッピーエンドとなる。そんなベビーブーム世代は、わが子にも「失敗を恐れず、欲しいものを手に入れろ」と勧めたはずだ。
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