今年の大卒は安定第一? それでもジェネレーションZが秘める大きな可能性
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月25日 12時2分
一方、Z世代を育てたのは、60年代初めから80年代初めに生まれたX世代。彼らを描いた代表的な映画は94年のベン・スティラー監督の『リアリティ・バイツ』で、大学を出た若者たちは退屈で無意味な仕事に悩み、エイズ感染を恐れていた。
「X世代には、幼い頃『鍵っ子』だった人が多い」とビショップ。「だから、失望したくなければ我慢強くなり、物事のコツを学び、用心深く気を配らなければならないという感覚を自然と身に付けた」
そういう親に育てられたZ世代は、ミレニアル世代と違って大人を信用せず、未来は万事OKだとも思っていない。ビショップによれば、Z世代に彼らの不安や用心深さの理由を問うと、こんな答えが返ってくるそうだ。だって親から夢や希望を吹き込まれたミレニアル世代の人たちが経済の現実に振り回されるのを見てきたから、と。
冒頭で紹介したバウダーズも、進学や就職の際にはネットで読むミレニアル世代の厳しい生活の話を参考にしたと言う。「何の計画もなく大学に入り、何のスキルもなしに就職活動をしていたら、今も親元に住んで、スーパーで働いていただろう」
ミレニアル世代への大打撃
今は経済が好調だから大げさに聞こえるかもしれない。しかしわずか2年前には、決して的外れな心配ではなかった。ミレニアル世代の多くは、不況の真っただ中で働き口を探していた。「ミレニアル世代の自立が遅れたことは、長期的にアメリカ社会の変動要因になるだろう」。今年1月、ピュー・リサーチセンターのマイケル・ディモック所長はそう書いている。
Z世代は2007年のサブプライムローン危機も目撃した MARK AVERYーREUTERS
ディモックは12年の報告で、サブプライムローンのバブルがはじけた後にミレニアル世代が受けた影響の深刻さを示している。当時、18〜24歳の若者で仕事に就いているのは54%にすぎなかった(統計の残る限りで最低レベル)。仕事があっても、過去4年間でどの年齢集団に比べても週給の減額幅が大きかった。調査対象のミレニアル世代の約半数は望まない職に就き、3分の1以上はスキルを身に付けるために学校に戻り、4分の1は親の家で暮らしていると答えていた。
「経済状況のせいで彼らは人生の選択肢や将来の収入、社会人としての成長を阻害された。次の世代は別な道を選ぶだろう」。彼はそう書いていた。
08年の金融危機と不景気のおかげで「世の中、万事うまくいくとは限らない」という「健全かつ悲観的な見方」が身に付いた。そう言ったのはオハイオ州立大学を卒業したばかりのカイル・レスコーゼク。当時10歳くらいだった彼は、ファイナンシャルアドバイザーの父が眠れぬ夜を過ごし、常にイライラしていたのを覚えている。
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