シニア犬をテーマにした体験型ドッグカフェ:犬と人が幸せになれる高齢化社会とは
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月2日 14時30分
「カフェの一角のスペースで一時預かりをします。ペットホテルや老犬ホームではありません。介護中の犬はちょっとでも目を離せないですよね。たとえば『一時間だけ家を空けて美容院に行きたい』と思っても、『でも、その間に何かあったらどうしよう』と、外出もままならない人が多いのです。そうした人たちのためのシニア犬の預かりを考えています」
我が家も今、まさにその状態だ。この取材にあたっても、妻と要介護状態の老犬を残して長野県の自宅から上京したのだが、前日の深夜に日用品の買い出しや月末の支払いを一通り済ませてから、妻が外出しなくて済むようにしてきた。実際のところ、1時間程度の外出の間に不測の事態が起こる可能性は極めて低いかもしれない。それでも、ほとんどの要介護犬の飼い主は、少しでも目を放したくないと思うのではないだろうか。
シニア犬を「オープンな存在」に
中村真弓さん
『meetぐらんわん!』では、営業時間の午前10時から午後7時までの間で、1時間からの日帰りでカフェの一角に並べられたケージ内で預かる。ケージが苦手だったり、気晴らしが必要な場合には外に出してカフェのお客さんや他の来店犬と交流させたり、個々のニーズに応じて営業時間外の預かりにも対応する。一度に預かる上限は5頭まで。テーブル席4席のカフェという狭いスペースだが、それもスタッフの目が行き届く範囲で運営するためだ。
利用をシニア犬に限定するわけではない。ただ、カフェでは、若い犬や必要のない犬も含め、おむつの装着を推奨する。それには、いつかおむつをしなければいけない時が来た時のための「練習」の意味もあるという。また、「百聞は一見にしかず」で、まだ老化現象が出ていない犬の飼い主が実際に認知症の犬や足腰が立たなくなった犬を見て、将来の参考にしてほしいという思いもある。「雑誌の文字情報だけでは分からないことがたくさんあります」と中村さん。「体験型カフェ」とした狙いはそこにある。
中村さんはほぼ店に常駐する予定で、男性店長はドッグトレーナーの資格を持つ。また、ペットケアマネージャーらシニア犬の専門家にも定期的に来店してもらう予定だ。「カフェのお客さんが、スタッフをつかまえて『うちの子はこうなんだけど、どうしたらいい?』と相談できる場になれば。犬の介護を始めると、どうしても家にこもりがちになってしまいます。悩みや思いをみんなと分かち合うと介護疲れも癒やされるし、情報交換もできます。『オープンな介護』を実践することで、シニア犬そのものをオープンな存在にしたいと思っています」
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