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シニア犬をテーマにした体験型ドッグカフェ:犬と人が幸せになれる高齢化社会とは 

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月2日 14時30分

シニアだという理由で診察やサービスを断るケースも

シニア犬への思いが詰まったシニア犬専門フリーマガジン『ぐらんわん!』

「シニア犬をオープンにしたい」という中村さんの言葉の背景には、"臭いものに蓋"ではないが、日本社会ではまだまだシニア犬が十分に社会に受け入れられていない実情がある。飼育放棄された保護犬の場合も、子犬や若い犬は比較的すぐに引き取り手が見つかるが、老犬はそうはいかない。筆者も、以前、自宅近くで年老いた迷い犬を保護したが、どこの保護団体に連絡しても「老犬は引き取り手がないから」と断わられ、結局うちで保護して最後まで看取った経験がある。長年取材している盲導犬育成団体の「(公財)アイメイト協会」でも、アイメイト(盲導犬)を引退した犬を引き取るリタイア犬奉仕者は、訓練前の子犬の飼育奉仕やアイメイトになれなかった犬を引き取る不適格犬奉仕に比べて希望者がかなり少ない。

中村さんも、専門誌を立ち上げてシニア犬の情報を発信するようになった経緯をこう話す。「2005年に独立して犬を飼える環境が整ったのを機に、実家から14歳のシー・ズーを呼び寄せたんです。ところが、実際にその子と暮らし始めるとシニアだということが理由で、色々な不便がありました。動物病院に連れていくと、『こんな年齢で新しい病院に来られても困る。元の病院に通い直してください』と診察を断られたことも。トリミングとペットホテルも断られ続けました」。当時はシニア犬の情報が少なく、まとまった情報の必要性を痛感した中村さんは、シニア犬専門のフリーマガジンを自ら発行することにした。

このように老犬が避けられる理由の一つは、責任回避であろう。平たく言えば、「うちで死んでもらっては困る」といった話だ。これまでにシニア犬向けの預かり施設やドッグカフェがほとんどなかったのも、この責任問題の壁があるからではないだろうか。リスクを負ってでもやるべきことだという覚悟を持ってオープンを迎える中村さんも、一定のリスクヘッジは考えている。「初めて預かる際には、しっかり飼い主さんにカウンセリングします。個々の状況に応じたケアをさせていただくと共に、双方の考え方が合わない場合にはお断りさせていただく場合も出てくると思います」と言う。

万が一の時には最高の見送り方を

店内にはシニア犬向けのグッズや介護用品も

『meetぐらんわん!』を各都道府県に1店ずつ出すくらいにまで普及させるのが中村さんの夢だ。そのように長く広く続けることになれば、当然、預かり中に危険な状態に陥ったり、最悪の場合は亡くなってしまう犬も少なからず出てくるだろう。中村さんは、「経験豊富なスタッフが、犬の状態を見て危険だと判断すれば飼い主にすぐに連絡をする」「最寄りの動物病院に連れて行く」という段階の先に、「スタッフ皆で誠心誠意看取る」というステージを今から想定している。

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