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韓国・文在寅政権が苦悩する財閥改革の現在地

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月27日 17時30分

――目ぼしい成果を上げるとすれば?
財閥を含めた大企業による中小企業に対する経済力乱用の取り締まりの強化があげられる。

フランチャイズ制の企業でよくみられることだが、「親会社」がフランチャイズの店舗の利益の大部分を吸い取り店舗の売り上げは薄利という、支配的な経営手法がこれまで問題視されていた。新政権の公取委は、そうした慣行の是正を進め、時には違反企業を摘発することもあった。これらを含めて、財閥改革において一定程度の成果があったとは言える。

その他に大きな変化として指摘できるのは、国民年金公団(NPS)が財閥企業の大株主であることの権利を行使して財閥改革を迫ったことだ。NPSの最高意思決定機関は保健福祉省の管轄下にあり、かつ政治的な独立性が低いため政府の意思を通しやすい。

実際、大韓航空の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長が株主総会で取締役の再任を否決される事態が起きた。こうした、議決権を行使した形での関与がインパクトは大きく、文政権が今後もこの手を使う可能性はある。

――文政権発足後から話題が南北融和に集まったこともあり、財閥に対する関心が薄れた印象もある。財閥改革に対する世論の反応をどう見ているか?
国民も、財閥を崩壊させればいいとは思ってはいない。財閥のオーナー(の横柄な振舞いなど)に対する批判はあっても、それは財閥の存在自体への批判とは違う。財閥に対して、国民のなかでは愛憎半ばする思いがある。不満がある一方、韓国経済が成長するための大きな推進役であったことを疑う国民は少ない。

ただ、政権やその支持層の中には頑な財閥批判者がいる。彼らのなかには、文政権の財閥改革は財閥と融和的ではないか、との視線を注いでいた時期もあった。



例えば、金東兗(キム・ドンヨン)前副総理がサムスン工場を訪問するという話が出た際には、政権の一部から批判が出た。また、文自身がインドのサムスン工場を訪問した際にも同様に一部から批判が出た。政権としても、経済が厳しいときには財閥に頼らざるを得ないところがあるので、ある程度の良好な関係を保たなければならないなど、苦慮しているのが実態だ。

ただ財閥改革の強硬派も、そうも言ってられない現実を理解し始めたのか、その手の批判を手控えている様子だ。実際、今年に入ってから閣僚級の財閥企業訪問が増えている。

――財閥自身は改革に対してどのような意識を持っていると考えるか?
今の政権が財閥や大企業批判を繰り広げた「ろうそく集会」で誕生した経緯があることから、財閥も政権の改革に従わざるを得ないという理解があるだろう。改革に対応しないと世論のみならず政権から何をされるか分からないという危機感もあるはずだ。実際、経営幹部が拘束されるような事態も起こっているのだから。

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