「借金大国ニッポン」をかすませる国家破産のリスク──世界の公的債務1京円の衝撃
ニューズウィーク日本版 / 2023年9月14日 15時25分
少なくとも結果的に、計画性の乏しい借入だったことは間違いない。
ただし、その一方で、危うい借り手のリスクが軽視されたこともまた確かだ。
デフォルトに陥った国だけでなく、多くの途上国・新興国でこの10数年の間に海外への公的債務が増えたのは、大きく二つの原因がある。
第一に、大国間のレースだ。中国が台頭し、融資に基づくインフラ建設で各国に勢力を広げるにつれ、先進国もこれに対抗して貸付を増やした。大国が競って、いわば気前よく貸し付けたことが、途上国・新興国のリスク意識を以前より低下させたといえる。
スリランカの例をあげよう。同国政府の統計によると、この国が抱える公的債務のうち中国のものは約47億ドルを占める。これに対して、日本のものは約27億ドルだが、日本とアメリカがそれぞれ主導権を握るアジア開発銀行と世界銀行からそれぞれ54億ドル、36億ドル、さらにインドからも10億ドルの借入がある。
インド亜大陸の南端に浮かび、インド洋の海上ルートの要衝に位置する小国スリランカは大国の覇権争いの舞台となり、このことが過剰な借入をもたらす一因になったのだ。デフォルトの危機に直面する国は、多かれ少なかれ同じような状況にある。
途上国ではないが、アメリカの国債もやはり大国のレースの対象になってきた。米国債の約1/4を占める7兆ドル程度は海外が所有しているが、最大の買い手は日本(1兆ドル以上)であり、第2位は中国(8000億ドル以上)だ。
日中は立場こそ違っても、アメリカ政府への影響力を確保するため、率先して米国債を買ってきた点では共通する。
「安いマネー」の終わり
そして第二に、これに拍車をかけたのが膨大な民間資金だ。
中南米やアフリカの多くの国は1980年代にもデフォルトの危機に直面したが、この頃は先進国やIMFをはじめ公的な借入がほとんどだった。ところが現代では金融機関による貸付が途上国の債務のかなりの部分を占める。
例えばスリランカの場合、海外の銀行などからの借入は147億ドルにのぼり、公的債務の42%を占める。これは中国や先進国からの融資を上回る水準だ。
スリランカだけではない。国連によると、途上国・新興国の抱える公的債務の6割以上は民間資金だ。
こうした状況は、膨大な資金が市場に出回るなかで生まれた。
2008年のリーマンショックの後、先進国や新興国が集まるG20では世界経済を下支えするため、伸び代が期待されていた新興国への資金注入を増やすことが合意された。これと並行してアメリカは超低金利政策を導入し、有り余るほどのドルが世界中に拡散した。
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