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なぜヒトだけが老いるのか? 生物学者が提言する「幸福な老後の迎え方」

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月26日 7時47分

高度経済成長期には、若手に就労の機会を与えるために定年制が有効だった面があったかもしれません。ですが、縮小傾向が進む現在は、定年制は労働者不足を加速するだけでメリットがないように思います。経験やスキルを活かして働く人材は会社にとって貴重ですし、本人が働きたいのならそのまま働ける方が自然ですよね。

逆に、定年制があることで、「定年まで同じ会社で勤め上げよう」という発想になってしまう。定年がなければ、違う職業についたり、新しい会社を立ち上げたりするという発想も生まれやすい。年齢の縛りなく人材の流動性が高まれば、適材適所が進んで生産性も上がる。個人も自分なりのライフプランが立てられて、より幸せに生きられるでしょう。シニアが本来の価値を発揮するためには、社会の側も変わっていく必要があると思います。

幸せな老後のカギは「共感力」にある

──老年期に差しかかり、身体的にできないことが増えてショックを受け、不安を感じている方は、老後とどう向き合うとよいでしょうか。

人間は社会性の生き物なので、他者とのつながりのなかで暮らすほうが幸せを感じやすいものです。ヒトは集団生活で協力し合い、共感力を高めてきました。1人で美味しいものを食べるよりも、誰かと「美味しいね」と共有しながら食べるほうが、より美味しく感じられませんか。

また、何かしら仕事をしているほうが、やりがいを感じやすい。趣味のコミュニティに所属するのもいいでしょう。自分の好きなことと、さらには人のためになることを続けて、共感する機会を大事にすることをおすすめします。

アンチエイジングの最前線 「老化細胞」を取り除けるか

──小林先生は健康寿命を延ばすための研究をされています。健康寿命を延ばしたい方向けに、良い兆しとなる研究結果があれば教えてください。

老化の大きな原因の1つは、遺伝情報が書き込まれているDNAが傷ついて変異し、少しずつ壊れていくからだとわかってきました。大切な遺伝子に変異が起きると、がんや認知症の確率が上がってくるんですよ。現に70歳を超えると半分近くの人ががんを経験します。

皮膚のDNAを傷つける要因として紫外線があります。紫外線は日光に含まれているので、日に当たりやすい顔や手の甲は老化しやすい。反対に、背中や内臓は若い人もお年を召した人もあまり変わりません。寿命が延びると、その分DNAの傷が溜まるため、がんになる可能性も高まりますが、もしDNAの傷つく度合いをコントロールしたり、傷を治りやすくしたりする方法が見つかれば、健康寿命を延ばせるのではないかと日々研究中です。

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