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なぜヒトだけが老いるのか? 生物学者が提言する「幸福な老後の迎え方」

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月26日 7時47分

1つ期待されているのが、老化細胞除去技術です。実は赤ちゃんも老化細胞をもっているのですが、うまく取り除いてくれる仕組みがあります。一方、年を取ってくると老化細胞が溜まっていき、悪さをする。そこで老化細胞を取り除こうとしています。マウスの実験はかなりうまくいっていて、老化細胞を取り除くとマウスが若返ったようになるんですね。これと同じことが、遠くない未来、ヒトでも可能になるかもしれません。

いずれにせよ、期待できるのは、がんになりにくくしたり健康寿命を延ばしたりする効果であって、寿命そのものが延びるわけではありません。人間の寿命は120歳くらいが限界といわれています。

「死なないAI」は、人類にどんな影響を及ぼすのか?

──昨今、ChatGPTのような対話型AIが爆発的に普及し、AIとの共存について考える機会が増えました。AIは人類の進化にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

まず、今後のテクノロジーの潮流は主に3つあると思っています。1つは不老不死の研究。2つめはAIの研究。そして3つめは宇宙空間の探検です。ここ最近はAIの分野が目覚ましい発展を遂げています。これは「AIに思考させて賢くなりたい」という欲望の現れといえるでしょう。人間は生物なので簡単には進化できませんが、コンピュータなら一気に進化できますから。

私たちはAIが時に間違う場面も見ているので、AIが万能ではないとわかっています。だから、あくまで人が主体でAIはそれに従属するツールだと思える。ところが、次の世代の人たちは生まれたときから、親や先生よりも物知りでパフォーマンスの高いAIとつき合っていくわけです。すると、AIに考えてもらうほうがラクに正解にたどり着けるからと、AIに主導権をわたしてしまうのではないか――。生物の機能は使わないとどんどん退化するので、ヒトが思考しなくなるのは問題です。

AIの登場は、人間の理解を超えた「エイリアン」の来襲といえるかもしれません。もしもAIの存続を優先するようなプログラムがなされたら、私たちはAIのメンテナンスをするためだけの存在になる可能性があります。それを防ぐためにも、私たちは自身で考えることをやめずに、人間の存在や幸せとは何か、どんなことに時間を使うかをこれまで以上に考えなくてはいけないでしょう。死なないAIが登場することで、命が有限である私たち人間の存在とは何なのか、AIの登場前には思い至らなかった問いと向き合うようになったといえます。

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