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なぜヒトだけが老いるのか? 生物学者が提言する「幸福な老後の迎え方」

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月26日 7時47分

分子生物学の研究へ進むきっかけをくれた一冊

──小林先生の人生観や研究に大きな影響を与えた本はありますか。

分子生物学の研究者をめざすようになった一番のきっかけになったのは、高校時代に読んだ『人間の終焉』という本です。著者は、戦後のDNA研究をリードしてきた渡辺格さん。生命現象の仕組みを分子レベルで解明する分子生物学の草分け的存在です。

1980年頃、ヒトが遺伝子にコードされているタンパク質によってつくられていることがわかり、DNAを全部読み解くと人間の設計図がわかるといわれていました。そうすれば人間とは何か、私たちのアイデンティティを生み出すものは何なのかも解明できるかもしれないと、非常に衝撃を受けました。ヒト同士の遺伝情報は0.1%くらいしか違わないのに、それだけで見た目も性格もこんなに違うわけでしょう? その0.1%がわかるのはすごく面白そうだし、早く研究しないといけないのでは、と切迫感に駆られたほどでした。

2003年にヒトゲノムプロジェクトで遺伝情報の解読が完了し、結局のところ設計図はわからなかった。ですが、『人間の終焉』は、分子生物学の研究へ進むきっかけをくれた大事な一冊です。

──最後に、小林先生の今後のビジョンをお聞かせください。

生物学の研究によって、人間の幸福につながるような新しい発見をすることです。DNAの傷を減らすことで健康寿命を延ばせるようにする研究に力を注ぎこみたいですね。シニアは社会のなかで重要な存在なので、元気でしっかり活躍できるようになればいいなと思います。人類全体の生産性や文化の継承、国際親善などを進めて、みなさんがやりがいを持って生きられるような平和な社会をつくっていかないといけません。研究者としては、健康の維持という面で、そのお手伝いができればいいなと思っています。

『生物はなぜ死ぬのか』
 著者:小林武彦
 出版社:講談社
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小林武彦(こばやし たけひこ)

1963年生まれ。神奈川県出身。九州大学大学院修了(理学博士)、基礎生物学研究所、米国ロシュ分子生物学研究所、米国国立衛生研究所、国立遺伝学研究所を経て、東京大学定量生命科学研究所教授(生命動態研究センター ゲノム再生研究分野)。日本遺伝学会会長、生物科学学会連合の代表を歴任。日本学術会議会員。生命の連続性を支えるゲノムの再生(若返り)機構を解き明かすべく日夜研究に励む。地元の伊豆、箱根、富士山をこよなく愛する。著書に『寿命はなぜ決まっているのか』(岩波ジュニア新書)、『DNAの98%は謎』(講談社ブルーバックス)、『生物はなぜ死ぬのか』(講談社現代新書)など。

◇ ◇ ◇

flier編集部

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