中東危機:シリアの沈黙、隠された動機と戦略
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月20日 18時25分
ハマースのこうした姿勢は裏切りと偽善が入り混じったものだ。一方、今日の(ハマースとの)関係は一般原則の範囲内での関係だ。我々は自ら権利を取り戻すため、イスラエルに敵対するすべてのパレスチナの当事者を支持する、これが一般原則だ。
(ハマースとの関係を回復させる可能性は)今のところない。彼らはシリア国内に事務所を持っていない。そうしたことを話すのは時期尚早だ。我々には優先順位があり、シリア国内での戦いが今のところ我々にとっての優先事項だ。
シリア政府の消極的な姿勢は、ハマースがシリア北部を占領するトルコ、そしてトルコと親密な関係にあるカタールから良好な関係を築き、支援を教授していることが背景だった。あるいは、占領に対する闘争における優先順位は、トルコ、有志連合によるシリア北部と南東部への占領への対応にあり、それに対してハマースの積極的に支持の姿勢を示すことを求めているとも解釈できよう。
いずれにせよ、シリア政府とハマースの和解、あるいは抵抗枢軸の再生がいまだ途上にあるなかで、ハマースは「アクサーの大洪水」作戦に踏み切ったと言えるのである。
戦略的パートナーだったイスラエルと反体制派
首都ダマスカス南部での抗争において、ハマースの系譜を汲むアクナーフ・ビント・マクディス大隊が、ヌスラ戦線を主体とする反体制派と共闘したことはすでに述べた通りだが、その反体制派は、占領下ゴラン高原に近いクナイトラ県、ダルアー県、ダマスカス郊外県南西部においては、2018年半ばに同地がシリア政府の支配下に復帰するまでは、ハマースと敵対するイスラエルの支援を受けていた。
シリア南部で負傷した反体制派の戦闘員の一部は、イスラエル領内へと搬送され、そこで治療を受けることができた。また、イスラエル領内からの武器、兵站支援なども行われていたとされる。2018年7月、反体制派がシリア南部で追い詰められ、シリア軍の包囲を受けた際、ホワイト・ヘルメットのメンバーとその家族約400人を救出する作戦を実行したのもイスラエルだった。シリア南部でのその後ほどなくして、戦闘継続を望む反体制派のメンバーが、シリア政府によって用意された大型バスでイドリブ県へ移送されることで決着したが、移送されたメンバーのなかにヌスラ戦線のメンバーは含まれていなかったとされる。
飛び火する「アクサーの大洪水」作戦の戦火
10月7日にハマースが「アクサーの大洪水」作戦を開始すると、その戦火は、レバノン南部(イスラエル北部)、そしてシリアにも飛び火した。
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