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不動産バブル崩壊で中国経済は「日本化」するか

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月26日 15時17分

私も中国はまだ10年以上は中成長が可能な段階にあると考える。ただ、中国が引き続き中成長の軌道をたどるのか、それとも低成長に陥るかは政策の選択による部分が大きいとも考える。政策の選択を誤れば、中国経済は長い低成長に入ってしまうかもしれない。そして、中国政府が適切な政策を選択できない可能性は決して小さくないと思う。

そのカギとなるのはやはり不動産である。中国の不動産業が今、深い罠(わな)にはまってしまって、なかなか出口が見出しがたい状況にあるのは事実である。しかし、不動産の発展がここで終わっていいはずがない。そのことは戦後日本の経験からいえることである。以下では戦後日本の不動産業の展開を振り返る。

    

日本の不動産業の成長を支えた「都市化」と「住宅高度化」

戦後の日本の不動産業は、量的に大きく拡大した1940年代末から1973年までの時期、量的には伸び悩んだが地価の上昇が続いた1974年から1991年までの時期、そして地価が下落する1992年以降と、大きく3段階に分けられる(橘川・粕谷編、2007)。不動産バブルが崩壊している2023年の中国は日本の1993年頃にあたると思われるかもしれない。だが、はたしてそうであろうか。

戦後日本の不動産業の成長を支えた社会経済的要因とは、農村から都市への人口移動、そして都市の中での、より広く、条件のよい住宅への住み替えであった。ここでは前者を「都市化」、後者を「住宅高度化」と呼ぶことにする。

戦後の日本の都市化がどのように進んだかを図2に示した。1946年から1970年までは「非農家人口」によって都市人口の定義としている。農家とは、10アール以上の農業を営んでいるか、または農産物の販売金額が15万円以上ある世帯のことを指す。家族の中で老夫婦だけが農業を営み、同居している息子・娘や孫たちはサラリーマンとして勤めていても、もし農業収入が年間15万円を上回るようであれば、その家族全員が農家人口に含まれる。農家が住んでいるところは農村であろうから、農家以外の人口がすなわち都市人口だろう、という推測に基づき、図2では非農家人口がすなわち都市人口だとしている。都市人口(非農家人口)の割合は1946年に55パーセントだったのが1970年には74パーセントへ急速に上昇した。

ただし、1970年代以降は農村に居住しながらも、家族の中で誰も農業に従事しないケースが増えていったので、「非農家人口」によって都市人口を測ることが適切ではなくなった。代わりに農林水産政策研究所の松久勉氏が作成した表から「都市的地域」の人口を抜き出し、それをもって都市人口比率とみなすことにした。図2では1970年以降は都市的地域の人口をもって都市人口比率とみなしている。

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