不動産バブル崩壊で中国経済は「日本化」するか
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月26日 15時17分
一方、私はというと、最初から都市に生まれ、1990年に結婚してアパートを借りたが、1996年に今の家に移り住んで現在に至る。住宅高度化は1回だけなので、日本の不動産業の発展にはあまり貢献していない。なるほど不動産業が伸びなくなるわけである。
中国の不動産業の発展は現時点で終わるはずがない
さて、長々と日本の話をしたのは、中国の不動産業の現在地がどこであるかを判断する手がかりを得るためである。今の中国の位置は、日本の中成長期の始まりだった1974年なのか、それとも「失われた30年」の始まりだった1993年なのか。
まず、中国の都市化はどの程度まで来ているのかを見るために、図4では都市人口比率(「城鎮人口比率」)を示した。ここで示したように中国の都市人口比率は1990年代半ばまで3割以下と、とても低かったが、その後一直線に伸びている。2021年以降はおそらくコロナ禍の影響もあってやや伸びが鈍化したが、2022年時点で65パーセントと、日本の1960年代前半の水準でしかないので、まだ都市化が進む余地は大きい。
ただし、今後も中国の都市化が一直線に伸びていくかというと、そこには懸念すべき要素もある。まず、中国では都市の制度が日本とは異なり、日本のように住民票を移しさえすれば都市の市民としての権利を享受できるわけではない。都市民としての権利をフルに享受するにはその都市の戸籍を得る必要がある。それがないと、子供を就学させることができなかったり、都市の住宅を購入できなかったり、車を買ってもナンバープレートを発行してもらえなかったりという制約を受けることが多い。そして都市の戸籍は、とくに北京市や上海市では取得することがかなり困難だ。都市の政府はこうした戸籍などの制度的障害を利用して人口の流入をある程度はコントロールできる。そのため、日本とは違って、制度的な障壁によって都市化が止まってしまう可能性がある。
ただ、中国の中央政府はかなり強い口調で戸籍による差別を撤廃して都市化を推進するよう訴えているし、現に都市人口比率が一貫して上昇していることを考えると、今後も都市化が進展するだろうし、最終的には都市人口比率が日本並みの8割前後にまで到達するであろう。中国の都市化はまだ道半ばであり、その水準は日本の1974年にさえ到達していない。この側面からいえば、中国の不動産業の発展が現時点で終わるはずがないのである。
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